「…僕は、ジュリアを愛しています」

少し震えながらも、凛とした声が医務室に響いた。


「ー…何をッ…」


ルシウスは目を見開き、ドラコを止めようとするがその手は振り払われた。


「…地位も、名誉も…何もいらない…ッ!僕は、」


” ジュリアだけ、いればいい。 ”


酷く悲痛な、それでいてどこか愛しそうにドラコは叫んだ。


沈黙が医務室を包む。


「…娘はハリーと付き合っているんじゃないのかい?」

その沈黙を破ったのは、以外にもアーサーだった。


「…それは、…」

「ジュリアがマルフォイを好きなのを承知で付き合ったんです」


ハリーは真っ直ぐに、アーサーを見つめた。


「…ずっと、知ってました…ジュリアとマルフォイが付き合ってるのを…、でも僕は…ジュリアをずっと好きでした」

「…ハリー…ッ」


ジュリアの声にハリーは優しく微笑み、言葉を続ける。


「…ジュリアが、幸せなら良かったんです」

「でもハリー、キミとジュリアは付き合っているんじゃないのかい?」

静かにアーサーがハリーを見つめた。

ハリーは目を逸らす事なく、言葉を続ける。


「マルフォイとジュリアの仲がこじれた時、僕がジュリアの弱みにつけ込んで無理矢理付き合うことにしたんです…」

「違うの、私が…私が卑怯だからッ」


ジュリアとハリーを交互に見た後、アーサーとモリーは顔を見合わせた。


「…ジュリアの、気持ちはー…」


アーサーは言いかけた言葉を呑み込んだ。


聞かなくてもわかってる事だ。

ジュリアは身を挺してドラコを庇ったのだ。


「…ハリーは、今どうしたいんだい?」


皆ハリーを見つめた、ハリーはゆったりとドラコに視線を向ける。


「…マルフォイ。お前は一度ジュリアを捨てた。…僕は前に言ったはずだ…”僕がジュリアを幸せにする”」


エメラルドとアイスブルーが交差する。

ジュリアはこれはきっと夢だと思っていた。

ドラコが、家よりも自分を選ぶはずがないー…。


次の瞬間、ドラコが立ち上がりハリーに頭を下げた。


「…頼む…、…もう、絶対にジュリアを離したりなんかしない…、今度こそ…今度こそ大切にする、だからー…ッ」


 ” ジュリアを、返してくれ。 ”


皆ドラコの行動に目を剥いた。

あのプライドの高い、傲慢なドラコが大嫌いなハリーに頭を下げている。


「返すも何も、ジュリアはずっとキミのモノだったよ。僕はジュリアを幸せに出来なかったみたいだ」



ハリーは儚げに笑う。


「ジュリアが幸せなら、僕はいいんだ」


ドラコはハリーと視線を交差させた後、再び頭を下げた。


「ドラコッ!自分が何をしているのかわかっているのか!?」


ルシウスがドラコの胸ぐらを掴み、殴り付けた。


それでもドラコの瞳の光は変わらない。


「…ッ…父上、…僕の気持ちは変わりません。神に、誓いました、何よりも誰よりも…ジュリアを愛すと…ッ」


ルシウスは目を剥いて、もう一度ドラコを殴ろうとしたがその腕をアーサーが止めた。


「放せ…ッ!」

「殴ったところで何が変わる」

「黙れ!ウィーズリー如きが私に意見するのか」


二人の言い争う声が医務室に響く、そんな中ジュリアがベットから飛び出しドラコを抱き締めた。


「…バカ…ッ…」

ジュリアの瞳は涙で濡れていた。


キミがいれば
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