女の子の時間



『クレオ、今回蜘蛛はお前を”パンドラ”として雇う事にした。次の盗みは慎重にやりたい。メンバーはお前が知ってる奴らがほとんどだ。呼んだらすぐにアジトに来い』


クロロにそう言われてから一週間。

シャルナークに頼まれた情報を調べながら、今クレオはフィンクスのマンションで暮らしていた。

と、言うよりフィンクスに連行されたに近い。


「どう?兄妹水入らずで暮らす感想は?」

マチとパクノダとはこうして昼間喫茶店で会うことにしている。


「最初はどうなるかと思ったけど慣れてきたら普通かな、一緒にいるから逆に安心出来るみたいであんまり口うるさくないし」


「良かったじゃない、クレオと暮らし始めてからフィンクスも機嫌良いし文句無しね」


にこりと微笑むパクノダにクレオは眉を寄せる。


「今回の仕事が終わるまでの話だからね」

「あら、出て行っちゃうの?フィン悲しむわよ?」

「一緒に居てあげたい気持ちはあるけど私にも仕事があるからさ」


クレオは罪悪感を誤魔化すように目の前のコーヒーに砂糖を入れスプーンで乱暴にかき回す。


「あぁ、そういやクレオの情報屋思ったより繁盛してるよね。すぐ廃れると思ったのに」
   

マチの言葉に酷い!と頬を膨らますクレオをパクが宥めた。



「…まぁ、でも…マチの言うとおり少し意外だったわ。クレオそういう細かい事嫌いだったでしょう?」

「それがね、一人暮らし初めてから目覚めたみたいで結構何でも出来ちゃうんだなコレが。上客もついたし」


「クレオが?まさか」

「まさかなの。面倒なのがハマるとこりだしちゃって…」

「あー、確かにフィンクスの奴もそういうとこあるよね。何かパンのシール集めたりジュースのシール集めたり」

「集めて送れば景品が当たるやつかしら?確か私が見た時は占いと風水に夢中だったけど…ほら、一時ずっと黒いジャージ姿の時」


あげればかなりフィンクスの奇行は出て来るもので想像するたびにクレオは笑いを漏らした。



「お兄ちゃんそんなことしてたの」

「アタシ等はたまにしか会わないからそこまで見てないけど…団長とかシャルに聞いたらもっと出て来るよ」

「明日聞いてみよー!あ!いけない!もうこんな時間」


クレオは慌てて荷物をしまい出した。


「もう帰るのかい?」

「まだ17時よ?」



マチとパクノダは残念そうにクレオを見つめる。


「うん、そろそろ帰って下拵えしないと夕飯に間に合わないの。あ。そうだ、良かったら二人共家で食べてく?」


クレオの言葉に二人は顔を見合わせた。


「そりゃ行きたいけどさ」

「でもいきなりはクレオも大変でしょう?」



遠慮がちな二人にクレオは笑いを漏らした。


「二人増えたって変わらないよ!毎晩ノブ兄達が夕飯と酒盛りに来てるし」


「あいつらそんな事してたのかい」

マチは怒りを露わにするがクレオが慌てて宥めた。


「いいのいいの!私もたのしいし、それにご飯は大人数の方が美味しいよ!皆気使って材料とか持って来てくれるし」

「……そうかい?クレオがいいならいいんだけど」

「ならお言葉に甘えてお邪魔しちゃおうかしら」


クレオは笑顔で二人を招いた。

帰り道、思い荷物はマチやパクと少しずつ持ち三人はフィンクスのマンションを目指す。



「ねぇクレオ」

「なぁに?マチ」

「毎晩来る奴らの中にフェイはいるのかい?」


瞬間赤くなったクレオを見てマチはニヤリと笑った。


「いるんだね」

「フェイはお兄ちゃんと仲良しだから」

マチの追求を誤魔化すようにクレオは足を早めた。


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