物語は書き換えられる



「くそ…ッ」

ベットに戻ってもモヤモヤとする感情にドラコは珍しく戸惑っていた。
何故こんなにもクロエに断られたことがショックなんだ?
デートの相手なら他にもたくさんいるじゃないか…


別にクロエじゃなくても…


もういい、明日パーキンソンを誘おう。
クロエの前でわざと誘ってやる、せいぜいこの僕の誘いを断ったことを悔やめばいいさ。


*


「ねぇドラコ?ホグズミードに行くんでしょう?」

「あぁ、もちろん」


腕に絡み付いてくるパンジーを止めることなく目だけでクロエを捜す、今日も彼女はドラコの近くに座っていた。ドラコは待っていましたと言わんばかりにパンジーの手を握った。


「パーキンソン、ホグズミードに行く相手は決まったのかい?」

「まだよ、私が誰を待ってたと思うの?」


そうだ、普通はこういう反応なんだ。
ドラコは少し自分の自信を取り戻したのかバレないように安堵するとパーキンソンの瞳を見つめる。


「よかったら、」

見せつけるようにしようと思った、だからクロエをチラリと横目で見る。

瞬間ドラコはその光景から目を離せなくなった。宿敵のハリーポッターがわざわざスリザリンテーブルまで来てるのだ。様子を見る限りクロエをホグズミードに誘いたいらしい。


ドラコの中でふつふつと煮えたぎる湯のような感情がグルグルと沸きあがる。


「ドラコ…?」

「あー、パーキンソン。よかったらクラッブかゴイルを荷物持ちに使ってくれ」


ドラコはそう言い捨てるとパンジーの手を振り払い真っ直ぐクロエの元へ歩み寄る。


「!、ドラコ…?」

「ポッター、此処はスリザリンのテーブルだぞ?」

「お前には関係ないだろ、クロエに用事があるんだ」

ハリーはドラコなんて関係ないという態度でクロエに向き直り照れ臭そうに笑う。

「よかったら僕とホグズミード行ってくれ、」

「悪いなポッター、クロエはもう先約済みなんだ」


ハリーの言葉を遮るとドラコはクロエの手を握り締め大広間から連れ出した。



「ドラコ!どうしたの?放して、私戻ってハリーに…」

「行かないでくれ」

「え…?」

「僕以外と行かないでくれ、勝手なのはわかってる。でも僕はやっぱりクロエと行きたいんだ」

アイスブルーの瞳は真っ直ぐにクロエを見つめる。前のような自信も余裕もないがその彼の瞳はクロエの気持ちを動かすのには充分だった。


「…私でいいなら」

「クロエがいいんだ」


その言葉にほんのりとクロエの頬は赤く染まり、少し嬉しそうにふわりと微笑んだ。




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