59 真逆



雲1つない夜空だというのに、その日だけは気分が沈んだ。
暗闇に消えていく飛行船をぼんやりと眺めながら、テルドは風のせいで顔にかかった髪を手で押さえる。夜はやはり少し寒い。レオリオは心配だと言うからクラピカに付いて行ったけれど行ったところで彼にクラピカは止められやしないだろう。

「随分、貴方には世話を掛けちゃったわね」

センリツがぽつりと呟いた。
ん、とテルドが返すが、やはり彼女に視線は移さない。私の事は好いてくれないのね、とセンリツが笑っても、テルドは何も言わない。理由は単純だ。何でも見通したような彼女が気に食わないだけだ。

「私は、クラピカの選択は間違ってると思っている」
「・・・俺は、そう思わないけれど」
「何故」
「貴方に話したくないです」
「ふふ、そうね、そうよね」

何が面白いのかセンリツはくすくすと小さく笑っている。こんな状況なのに可笑しなものだ。

「私ね、昔は可愛かったのよ?」
「・・・それ、もう聞きました」
「あら、そうだったかしら」
「そうですよ」
「闇のソナタよ」
「は?」

疑問に表情を歪めると、センリツがは満足そうに笑った。

「魔王が作曲したって言われてる曲なの。私が聞いたのは1番までだった」
「それでその様な醜い姿に」
「だから昔は可愛かったのよ。写真見る?」
「あまり変わってないですね」
「失礼ね」

確かに写真に写っていたセンリツは可愛らしい。否、可愛いというよりも美人という方が似合っている。ただ、それが何故ここまで変化したのかが理解できない。かなりの邪念が込められていたのかもしれない。

「でも、曲を弾いた友人は死んじゃった」
「・・・・良かったですね」
「何故」
「貴方は生きていたのだから」
「・・・」

センリツが、出っ歯を見せながらくしゃりと笑った。
同情くらいしか出来ないけれど、センリツはそれでも、ありがとうと呟いた。意外と笑った顔は可愛いかもしれない。そんな事を考えて、テルドはフッと笑った。
センリツはきっと気付いている。テルドがどんなに卑劣で悪者か。何をしようとしているのかも。それはキルアもミルキも、パリストンさえも知らない。テルドにしては珍しく大きな野望だった。

「聞きたいか」

俺が、何をしようと企んでいるか。
暫く考え込み、センリツは小さく頷いた。




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