甘党悪魔さま


その悪魔は高い身長と金色の髪に黒いコートが特徴的。
普段は冷たい表情でずげずげ物を言う無遠慮な悪魔。
無類の甘い物好きで、普段と一転して好物の甘いもの全般に飛びつくハイテンションっぷりにわたしはいつもついていけない。

「ルージュラちゃんってどんな悪魔なんですか?」

それゆえ紅茶とお菓子をたしなむ間は比較的機嫌が良いので、お勉強も兼ねてこの悪魔、インゴさんにいろいろ質問するのだが、足を組み優雅に紅茶を飲む姿は、先ほどのハイテンションモードとは違いとても様になっている。

「ルージュラは美女に化け、唇を許した男を永遠の眠りにいざない魂を抜き取る悪魔です」
「ルージュラちゃんってそんな怖い悪魔だったんだ…」
「彼女らは中堅悪魔ですが、人型ですので呼ぶ際は上級悪魔と扱いは同じです。それに短期間であそこまでの関係を作れるのも稀、やはりお前にはそれなりに才能があるのでは?」

インゴさんは紅茶を飲みながら真面目な考察をした。

「インゴさん褒めてくれてるんですね!」
「まあワタクシを呼んだのですから。一応褒めて差し上げてます」
「私に呼び出されたことまだ引きずってるんですか?」
「未だ信じられません」

ルージュラちゃん以上に長い付き合いをしているのがこの悪魔。
と言っても知り合ったのは最近なんだけどね。
はじめて呼んだ時は殺されかけた。
私も何故こんな上級悪魔を呼び出せたのか分からない。
呼びたくて呼んだわけではく、話せば長くなるので割愛するが…
しかしそれをきっかけに、彼に(人界への便利なの入口として)気に入られてしまったらしく、その日以来インゴさんとはちょくちょく会っている。
彼と契約はまだしたことはない。

勝手にやってきては、深夜のコンビニに飴やチョコをしこたま買い込んで帰っていったり、私をメイドかなにかのようにこき使う。
更に現代の娯楽にも興味津々で、羊羮片手にテレビを見るような悪魔だ。
彼にとって、ここはぐうたらするには丁度良い場所みたい。

普通悪魔は呼び出さない限り、此方に来れないし長居できないのだけど、インゴさんは上級悪魔でも超エリートというやつで、簡易な悪魔避け程度は難なく突破する。

悪魔避けも効かないし、上級悪魔を扱える程実力も無い私は、日々なかなか強く出れないのだった。

「そういえばお前はなぜルージュラを呼んだのですか」
「ちょっと魔法失敗しちゃって後片付けが…その…」
「相変わらず愚図ですねお前は。才能云々言ったワタクシが間抜けのようではないですか」
「うう…」

そして今日も彼はチョコパイとバーゲンダッツを箱ごと両脇に抱えて帰っていく。

prev next