「隣おじゃまするわよ」
「おっ、似合ってんじゃねーか。さすがシュラ様プレゼンツ」

酒を片手にパラソルの下に寝転ぶシュラは、私の水着姿を見あげてニヤニヤと笑う。

「わざわざ気を使ってくれた?」
「なんのことだ?」
「シュラのことだからもっとAVみたいな水着選ぶと思ってた」
「ばっか、お前のエロ水着姿なんか見せたら騎士団の9割が無力化されちまうだろ〜?」

くだらない冗談を叩き合いながら、私はシュラのとなりに腰を下ろす。
ハイネックの水着のおかげで首元の痕は気にならない。

「あれ、雪男は行かなくていいの?」

ゴーグルにポロシャツにカーゴパンツ型の水着。そしてライフルを背負ったままの雪男はええ、と短く返事をする。浜辺からしえみちゃんが雪男を呼ぶ声がしたが、雪男は笑ったまま手を横に振った。

「バカだな。行ってこいよ15歳!」
「シュラさんは気を抜きすぎです」

責めるような雪男の視線にもシュラはなんのその。これの相手を真面目にする雪男の几帳面さは疲れないだろうかと心配になるレベルだ。

「兄はまだ処刑宣告を受けたままだ。フェレス卿は守ると言ったって、フェレス卿自体油断できないんだ」
「雪男、そんな、気を張らなくても・・・」
「はなさんはフェレス卿を信頼しすぎてるんじゃないですか?」
「そう、かな・・・」

彼をどこまで信用していいかなどわからない。しかしメフィストさんは数少ない頼れる部類の存在だ。
人ではない悪魔だとしても、燐のことは任せても問題ないはずだ。おなじ悪魔でもあるし、一応説明の筋は通っている。
それにアマイモンは自分を助けてくれた。悪魔だから、という理由で邪険にするにはどうにも心が納得しない。
雪男のピリピリとした緊張感が肌を刺す。

「あれも怖いこれも怖い。お前の考え方で行くと燐は一生檻にでも閉じ込めておかなきゃならないな?ビビリめ」
「シュラ、煽らないで」

ニタニタと笑いながら寝転ぶシュラは「サンオイル塗ってくれ〜」と容器を投げてくる。
豊満な肉体を惜しげもなく晒す面積の少ない水着の紐を、雪男の前でも恥ずかしがる素振りも見せないで解くシュラにため息を漏らしつつ、私が受け取ったサンオイル塗ってやる。

「ぐふふ、羨ましいか?雪男」
「あんまりふざけてると撃ちますよ」
「んだよつまんねーな。おいはな、お前の背中は雪男に塗ってもらえよ」
「きゃ!ちょっとシュラ!!」

背中をつつと撫でお尻の危うげな位置のリボンをシュラの指が引っ張る。おもわず見えてしまった割れ目。雪男が勢いよく視線を外す。

「・・・見た?」
「見てません」

お互い真っ赤になったのを指差して笑うシュラをどうしてやろうかとふたりで睨んだところ、ちょうどクラーケンの接近を知らせるサイレンが鳴り響いた。


夏の坂

20150923 tittle by まよい庭火