「海やー!俺はコレを待っとったんや!夏!海!そして・・・」
「ウルサイ、キモイ。私の半径2m以内に近寄るな」
「海神よ・・・!あざっしたァァァ!!!」

先に行ってしまった出雲ちゃんを見たんだろう。志摩くんの雄叫びが大きく響いている。

「ね、ねぇ。はなちゃん。私の格好へんじゃない!?大丈夫!?」
「変じゃないよ〜かわいいかわいい!」

濃い桃色のビキニには白いレースがふんわりとあしらわれている。胸元を飾る白いリボンもこれまた愛らしい。年齢の割に成長している胸元は正直羨ましいくらいである。

「で、でもこんなほとんど裸だよぉ・・・」
「みんなおんなじような格好だから大丈夫だって」

世間慣れしていないしえみちゃんの涙混じりの声には笑うしかない。
かくいう自分も水着なんて授業くらいでしか来ていなかったから気恥ずかしさが拭えはしないが、シュラ指定の水着はみんなより表面積が多いのでまだ救われる。
ワンピースタイプの黒い水着はハイネックなので首の怪我を隠してくれる。ヒップのあたりもフリルスカートがついていて羞恥心が軽減されているが、かわりに背中は大きく開いておりお尻の割れ目が見えそうな位置まで生地がない。うなじとそのお尻のポイントに黒いリボンがあしらわれ、セクシーとキュートが混ざったようなデザインだ。

「私たちもそろそろ行こう?ほら、任務なんだから」
「これは任務・・・これは任務・・・うん、がんばる」

顔を真っ赤にしながら呪文を唱えるしえみちゃんの手を引いて更衣室を出て浜辺に向かう。そろそろ任務の説明が始まりそうだった。

『今回の祓魔対象はクラーケンだ!作戦は観光客を避難させてここ熱海サンライズビーチにて行う』

拡声器を使ったシュラの声が響く。
クラーケン。太平洋沖で遠征漁業船がいくつか沈められているらしい。早急な対応が必要とされるとは言え、こちらは候補生を含む一団だ。はたしてこの人選は大丈夫なのだろうかと首をかしげる。

『作戦は特にないが、中二級以上のものはクラーケン担当、中二級未満及び候補生はクラーケンの吸盤から排出されるスキッド掃除を担当する。・・・ちゅーワケで、それまではバカンス気分でいてよし。以上解散!』

シュラの宣言とともに騎士団たちが各々散らばる。水着姿に銃器装備とは、なんだか不思議な光景だ。

「しえみ!おっ、お前水着着たのか!」
「・・・やっぱりこんなことで恥ずかしがっちゃダメだと思って!そ、それに・・・はなちゃんも着るから!」

しえみちゃんは駆けてきた燐に拳を握りしめて意気込む。丸見えのしえみちゃんの谷間から視線をそらす燐の反応が可愛くて思わず笑ってしまった。

「って、お、おまえはなか!?」
「そうだよ?え、もしかしてわかんなかった?」
「お、おう。だってなんかいつもと雰囲気違うじゃねぇか・・・」

そうだろうか?と思わず自分の姿を見下ろす。髪をまとめているからだろうか。
赤らんだ顔のままの燐の手を引いて、しえみちゃんが一緒に遊ぼうと海を指差す。

「よ、よし!遊ぼう!はなも行こうぜ!」
「私はパスしておくよ。足の傷、塩水で化膿したら困るし」
「そ、そっか・・・」

しょぼくれる燐に手振って見送る。ふたりは志摩くんや三輪くんたちのいる浜辺へと向かっていった。


いまわに百合が咲きました

20150923 tittle by まよい庭火