▼あんな出来事があってから、直ぐにイワンは破門になった。ラクサスがそれを知ったのは三日後のベッドから目を覚めた時だった。

塑琉奈はずっとそれまで、ラクサスの側にいたという。

そして目が覚めたラクサスが一番に目に飛び込んだのは、塑琉奈の泣きそうな顔だった。ラクサスをイワンから庇った時にしたあの顔と同じで。


▼ああ、俺は、また護られた。強くなりたいと、君を護りたいと励んでいたいた筈なのに。

何も知らず、まだ俺が弱いから、塑琉奈がこんな目に遭っていたことを知らないまま日々を過ごしていたなんて、俺はとんだ馬鹿野郎だ。


▼それでも塑琉奈は目を覚ました自分に、優しく声をかける

「ごめんな、俺のせいで。ごめん…」
「……なんで謝るんだよ…」
「だって俺のせいだもん…」
「誰も塑琉奈のせいだ、なんて言ってねぇだろ…」
「…でも………。…。あの、えっと…後でさ!甘いもの食べに行こうぜ!なっ!」
「…おう」

謝らなきゃいけねぇのは俺の方だ。お前を護れなくて、弱くて、すまねぇ……


▼その後から、二人の間に歪みは無くなっていった。 ラクサスにとってイワンのことは、正直複雑な心境だったが、正反対に塑琉奈に幸せが戻ったと感じ、彼はもうそれで良いと割り切った。

何度か塑琉奈がその事で引け目を感じ、謝ってばかりだったが彼は全く気にしてなかった


▼「ラクサス、ごめんね。お父さんのこと…俺のせいで破門になっちまった…」
「…あんなの、自業自得だろ」

今はあんな奴、もうどうでもいい。

「うぎぃ、だってラクサスだってあんな傷負ったし」
「もういいだろ、んな話は」
「ううぅううー!」
「あー!うるせぇうるせぇ!いいっつってんだろしつけぇぞ!」


▼塑琉奈が、この場所だけじゃなくて、俺や、親父のこと、FTの皆のこと、全部のために我慢してたなんて、判ってんだよ。

親父のことが知れれば、FTに何が起きるか判らない。悪い噂も飛び交ってしまうだろう。

そしてお前は、親父のこともちゃんと家族として見てくれてたことも、全部、判ってるよ


▼それからラクサスはちゃんと、時間がある日には秘密の場所に向かい、塑琉奈と時間を過ごしている。

そんな日々が続くようになった。

だがラクサスの心奥にはずっと『強く、強く、誰よりも強く』という心が燻っていた。そしてそれは形になり、ラクサスは更に力を付けるようになった




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