▼昨日まで元気に笑っていた彼女の姿が見えない。

そういや昨日、塑琉奈のやつ「用事があるからそっちいけない」って俺に言ってたな。

用事の内容は教えてもらっていない。ただ思い浮かぶは別れ際に「さよなラクサスー!」と笑顔で手を振る塑琉奈の姿だった。


▼「ミラ」

「あら、おはよう。ラクサス」

「塑琉奈はどうした?寝坊…じゃねぇよな?」


自分よりも先にギルドにいる、クエストボードに依頼書を貼っているミラの背に声掛ける。

普段なら俺やミラよりも先にいるはずだろう塑琉奈のことを疑問に口に出してみれば、ミラは途端に眉をハの字にして控えめに笑った。


「ちょっと具合が悪いって、マスターを通じて連絡が来たの」

「…は?」

「昨日まであんなに元気だったのにね」


▼心配しているのだろう、少し目を伏せ目がちに前を向くミラ。俺は彼女の言葉に、一瞬だけ目を見開いた。

彼女の言う通り、昨日まではとても元気だった塑琉奈。

いつも通りギルド内を徘徊したり、調理をしたり、たまに仲間たちと会話をしながら動き回っていたアイツ。

それが今日になって『具合が悪い』とは、思いもよらない事実で。

▼「…ちっ」

「どこ行くの?」

「…何処だっていいだろ」


あの野郎、っと思わず舌打ちを溢し、俺は踵を返す。その背にミラの声が掛かるも、俺は扉まで真っ直ぐ歩き出す。

…どうして、こういう時ばかり何も言わず、頼ろうともせずに、顔に出さねぇんだよ、あのバカはよ。

いつも何かねだる時や食い意地張ってる時は素直なくせに、それをこういう時にしろってんだ。


「(…何か買って行くか)」


風邪だろうか、熱だろうか、はたまた別の理由だろうか。…まあ、アイツ一応『女』だもんな。


そう思いながら、何を買おうかっと果物や飲み物を頭上に思い浮かべ、足を動かす。

それでも、塑琉奈に会いに行くってことに、少しだけ浮き足だっている自分がいた。



▼診断メーカーより
【あなたは『体調が悪くても顔に出ない』ラクソルのことを妄想してみてください。】


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