▼俺が魔法を初めて使ったのは、確か9歳の頃。ただ楽しく絵を描きたい、それが唯一自分自身の世界に入り浸れるからだ。あの頃はまだ、孤児というレッテルが苦しくて、一人ずっと絵を描いてた。

皆一人一人、何かを抱えてる。そんなことは判ってた。それでもまだ子供の俺にはそんなことサッパリ受け止めれる自信はなかった。

ガリガリ、ガリガリ、今日も俺は賑やかなギルドの中で一人、静かに絵を描く。


「ねぇ何描いてるの?」


明るい声と、目に入る金髪。うんしょっと椅子に乗り上げて、俺のノートをじっと見つめる子供。それと同時、パァッと嬉しそうに声を上げる。


「すっげー!絵上手いんだな!お前!!!」って笑顔で俺の顔を見る。あれが彼との出会いだった。
なんて、眩しい笑顔なんだろう。

▼「おー、ラクサス。なんじゃ来てたのか?」

「うん!じーじのギルド楽しいから!」

「そうかそうか」


彼と共に、目の前に父ちゃんがやってくる。彼のにへへって笑う姿にじいじも釣られて笑う。


「そうじゃ塑琉奈、紹介するぞい!儂の孫のラクサスじゃ」

「えっ、じゃあこの子がじいじの娘っ!?」


驚く彼の側、じいじの言葉に俺はつい肩を竦める。だって私にはじいじの子供だって自信がないのだから

それでも、あの頃のラクサスはまた俺に笑顔を振り撒く


「よろしくね、塑琉奈!」


あれからだったかなぁ、俺がやっとうまく笑えるようになったのは、胸を張って生きていけるようになったのは


▼ラクサスは判ってないんだろうなぁ、俺はね、はじめからお前に救われてきたんだよ。あの頃も今も、貴方のあの眩しい笑顔のおかげで俺は、俺としていれるんだよ。

だからね、いつもお前は俺のために何かをしてやろうと必死になってくれるけど、俺はもう…ラクサスから沢山の温かさと導きを貰ってるんだ。


「だから俺は今日も」


あの日頂いた眩しさを思い出して、お前の無事を祈る



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