「…塑琉奈。」
「…なんだよ、笑えよ」
「俺のこと、ちゃんと一人の“男”として見てくれてんのか?」
「…え、」
自分に重なる彼の影が大きくなる。それはラクサスがこちらに近付いてきてる証拠。そして笑わない彼の意外な言葉に、逆に俺が呆気に取られた。
「…だ、だってお前、自分がカッコいいから女が来るんだぞ、分かってる?」
「…、そうじゃなくてよ…」
「俺は、その…、あの、」
言葉がこんがらがる。なんでラクサスこんなこと言うんだ。一人の“男”として??えっと、それって、つまり
「俺は好きで…塑琉奈の隣にいたいって思ってんだがな」
ぎゅうっ、ゆっくり、大きな彼の体に抱き締められる。そのラクサスの声はいつもより低くて、いつもより体が熱くて、彼の言葉に俺の感情が溶かされていく
「…俺もラクサスの隣歩きたい」
「…歩きゃいいじゃねぇか。」
「だって…、釣り合わねーもん」
ムスウッ、頬を膨らませて体に回された彼の手に引っ付く。そして自然と本音がポロリ、と溢れた。
それを聞いた彼が「はーーー…」っと大きなため息
……なんだよ、ムカつく。
「もしかして勝手にそれ考えてたのか?」
「…うるせうるせうるせ」
「図星かよ」
ムカつくのでボスンッと全体重掛けてラクサスに寄り掛かる。けれど、それを彼は難なく受け止めた。
「塑琉奈のくせに一丁前に周りの視線気にしてたのか、ははっ!そりゃ笑えるぜ」
「だぁああ!うるせぇうるせぇ笑うな!クソゴリラ!!」
「さっき「笑えよ」って言ってたじゃねぇか」
「それとこれとは別だーーーーーー!!!!!」
結局ラクサスから出た笑いに、悔しさのあまり彼の腕の中でバタバタともがく。けれども、それはラクサスの強い抱擁に止められた。
「俺は塑琉奈しか見てねぇよ」
そして、耳元でそう囁く。ぎゅうっと強くなる彼の腕、その言葉と同時に身に染みる。
ああ、本当にムカつく。どうしてこう、恥ずかしい言葉を簡単には言うんだコイツは。だからカッコいいんだよ。ムカつく
「…分かったよバーカ」
悔しいから、俺からは言ってやらないんだから。そう内に溢しながら、俺は赤くなった顔を隠すようにラクサスの首に口付けを落とした。
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