とくせい もうか はつどう
「ユンゲラー……。懐かしいポケモンだね」
「カントー地方にも生息してるんですね」
「うん。まさかコウキ君が持っているとは思わなかった」
野生のユンゲラーは見ていないけど、その進化前であるケーシィがなら203番道路で見た。
恐らくコウキ君はケーシィの時に捕まえて、ユンゲラーまで進化させたんだろう。
確かケーシィは進化させない限り、自力で覚える技は”テレポート”だけだったような……。
そんなケーシィからユンゲラーに進化させているということは、それだけポケモンに真摯に向き合ったという事になる。
「では行きますよ! ユンゲラー、”ねんりき”!」
「! ムックル、ユンゲラーの視界から逃げて!!」
ねんりき
弱い念力を相手に送る事でダメージを与える技だ。偶に混乱させることがある厄介な技でもある。
ただし、この技は相手に念力を送る事で成立する技。つまり、その対象を(ruby:見る:・・)事が必須なのだ。
つまり、それさえ回避できればいいのだが……
「……っ!」
……難しいのが現実なんだよね。
”ねんりき”によりムックルの動きが封じられてしまった。
……違う、あの時ムックルに逃げ回るように指示するのではなく、”でんこうせっか”を利用して躱し、ダメージを与える立ち回りが正解だ。
こんな所でユンゲラーというポケモンに会うとは思わなかったから、エスパータイプのポケモンをそこまで見ていなかったから……すっかり頭から消えていたんだ。
「っ、ムックル!」
”ねんりき”から解放され、その場に倒れてしまったムックル。
ムックルのボールを取りだして彼を戻す。
「……お疲れさま。ゆっくり休んでね」
ムックルのボールを定位置に戻し、次に握ったのはモウカザルのボール。
……相性は完全に向こうが優勢。私の記憶が正しければ、ユンゲラーはかなり早いポケモンだったはず。それも、モウカザルを抜くほどに、だ。
それ以外には特攻がかなり高くて、防御面は特殊攻撃に強かったはず。
しかしその分、体力と攻撃は低く、防御に関してはかなり弱かったはずだ。
……その素早さと強力な特攻をどう対処するか。
それさえ突破できれば、相性の悪いモウカザルでも突破口があるはず。
「いっておいで、モウカザル!」
一回転しながら飛び出し、綺麗に着地したモウカザル。
その後ろ姿はやる気に満ちていた。
「さぁ、ここからが本番だよ! モウカザル、”マッハパンチ”!」
「ユンゲラー、”ねんりき”!」
”マッハパンチ”でなんとかユンゲラーを翻弄しているけど、この作戦がいつまで持つかわからない。
……それに、エスパータイプのポケモンは格闘タイプの技に強い。
だから今やっていることは効率の悪い戦い方だ。
「……この戦況を変えるには」
モウカザルに弱ってもらうしかない。
そしたら、モウカザルの攻撃力でユンゲラーを倒せるかもしれない!
「先制貰います! ユンゲラー、”ねんりき”だ!」
素早さはユンゲラーが勝っているようで、モウカザルは先制を取られてしまった。
そして、効果抜群のエスパータイプの技を受けてしまった。
「……っ、耐えて、モウカザル!」
苦しそうに顔を歪めるモウカザル。
”ねんりき”攻撃から解放された彼は___膝を付きながらも何とか耐えたのだ。
このチャンスを……モウカザルの頑張りを無駄にしない!
「今よ! モウカザル、”かえんぐるま”!!」
モウカザルは私の指示に、身体に炎を纏わせた。
そして、勢いよくユンゲラーに向かって突進。
「この炎の威力……まさか!」
どうやらコウキ君は私の意図に気づいたらしい。
でも……気づくのが遅かったね!
私が狙っていたのは、モウカザルの特性『もうか』の発動だ。
もうかはピンチの状態に発動する特性。
その効果は炎タイプの威力を上げるという単純なものだが……その威力は凄まじいものだ。
それに……ユンゲラーは特殊型であるため、物理攻撃に弱い!
そのため、物理攻撃である”かえんぐるま”のカウンター攻撃にユンゲラーは……恐らく耐えない!
「っ、ユンゲラー!!」
モウカザルはユンゲラーに攻撃を直撃させた。
……私が特性発動を狙ったのは、威力の底上げもあるが、ユンゲラーを一気に倒すにはこれしか思い着かなかったんだ。
ユンゲラーはモウカザルに吹き飛ばされた後、そのまま立ち上がることはなかった。
つまり___私達の勝利だ!
「……ボクの負けです」
コウキ君はユンゲラーをボールに戻し、こちらに近づいて来た。
「やっぱりナマエさんは強いなぁ。でも、いつか絶対に勝ちます!」
「! ふふっ、うん。楽しみにしてる」
きっとコウキ君はすごいトレーナーになる。
なんでかは分からないけど……どこか、レッドのような面影があるんだ。
2021/12/20
prev next
戻る