みどりいろの ポケモン
虫とり少年たちとのバトルに勝利して、ハクタイの森を更に進む。
ここの野生ポケモンたちは中々強い個体が多いようで、ポケモン達の特訓にもってこいだ。
うーん、でも流石に森で野宿はきつい。何かと森は危険なのだ。
一応野宿の心得はあるよ?これでも旅歴は2年だし、カントー地方では野宿したこともあるし。
「……?」
なんだか森が騒がしい気がする。
さっきまでポケモンの鳴き声がたまに聞こえる程度の静かさだったのに。
「! どうしたの、ムックル?」
何かを察知したのか、ムックルが道の外れた場所へ飛んでいく。
少し離れて止まっては、まるで私に「こっちだよ」と導いているようだ。
ムックルを追って進んでいくと、そこには野生のポケモンに襲われている緑色の小さなポケモンがいた。
明らかに弱いものいじめという言葉が当てはまる状態だ。放っておけない!
「ムックル、”つばさでうつ”攻撃!」
私の指示でムックルは攻撃態勢に入る。
ムックルの存在に気づいたポケモンたちだが、気づくのが少し遅かった。ムックルの攻撃をもろに受け、その場に転がる。
「ムックル、”かげぶんしん”。次に”でんこうせっか”よ!」
相手が2体以上であり且つこちらが1体の場合は、相手の選択肢をいかに惑わすかが大事だ。それはトレーナー同士のバトルでも野生のポケモンが相手でも同じだと教わった。
ムックルは”かげぶんしん”で相手を翻弄したあと、その隙を狙って”でんこうせっか”を繰り出した。
野生のポケモン達はムックルの攻撃に怯えたのか、尻尾を巻いて逃げてしまった。
「お疲れ様、ムックル。オレンの実よ」
お礼を兼ねてオレンの実を与えると、ムックルは私の腕で羽根を休めると嬉しそうに木の実を啄んだ。
ある程度の大きさまで啄むと、一口で木の実を食べた。おぉ。
ご機嫌なムックルは私の頭に止まろうとしたが、流石にそのかぎ爪で頭に止まられるのはまずいので、肩で我慢して貰う。
そんなムックルを見た後、怯えながらこちらを見つめるポケモンに目線を合わせた。
「大丈夫? 怪我は……」
ない?と声を掛けようとした瞬間だった。
緑色の小さなポケモンは威嚇なのか、大量の粉をまき散らした。
これは、花粉……?と思った時だ。
「へっくしゅっ!!」
花粉を吸い込んだと思えば突如出てしまったくしゃみ。しかも全然止まらない。
一体どういうこと!?
***
ムックルに花粉を飛ばして貰い、やっとのことでくしゃみが治まった。
ムックルもこのポケモンの花粉にやられて動きづらかったみたいだが、何とか頑張ってくれた。お礼とご褒美を兼ねて再び木の実を与えた。
まだ怯えている小さなポケモンに近づき、図鑑を向ける。
「”スボミー”っていうんだ……」
緑色の小さなポケモンはスボミーは、可愛らしい見た目に似合わず毒の棘を持っていたり、毒素の混じった花粉をばらまくらしい。
先程私とムックルが受けたのはその花粉だろう。くしゃみ止まらなかったし。
可愛らしい顔は怯えているようで、少し震えているように見える。
それもそうだ。先程まで野生のポケモン達に襲われていたのだから。それに、こんなに小さな子ならば、人間なんて未知の存在に近いかもしれない。
「大丈夫、私はあなたを攻撃したりしないよ」
「……?」
手を差し伸べれば不安そうにこちらを見上げるスボミー。
どうやら攻撃の意思はなさそうだ。
そっと触れると震えながらも反撃の様子はなさそうだ。うん、良い子。
先程野生のポケモン達に襲われていたから弱っているはず。そう思いオレンの実を差し出すと、匂いを嗅いだあと、スボミーは小さく一口囓った。
「この子、本当に小さいなぁ。まだ生まれたばかりなのかな」
それだったら近くに親がいるだろうけど……迷子だろうか?
放って置いたらまた野生のポケモンに襲われそうだし、どうしたものか。
「よし、この子の親を探そう! ムックル、手伝ってくれる?」
私の問いにムックルは「いいよ!」と言うように返事をした。
うん、本当に声が大きいね、君。
それに、さっきのしびれは取れたようだ。
元気で何よりだよ。
「じゃあスボミー、ちょっとごめんね」
小さな身体を抱き上げると、最初はビクッと抵抗のようなものを感じたけど、次第に落ち着いてきたようだ。
ムックルは私の肩に止まり、偶に一鳴きしている。
うん、声が大きいからできればやめてほしいんだけどね。スボミーびっくりしちゃってるから。
「ちょっと暗くなってきたなぁ……」
スボミーを片腕で抱え、左腕に着けているポケッチを見る。
時刻を見ればもうすぐ夕方だった。そろそろ森から出たいところだ。
「……あれ?」
そう思っていると、前方から見覚えのある少年が。
向こうもこちらの存在に築いたのか、大声を上げてこちらを指指した。
……人に指を指すのって、あまりよくないんじゃなかったっけ。
2021/12/14
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