おめでとう! コリンクはルクシオに しんかした!



「……ムックル?」


頑なに群れを見ないムックル。
どうしたんだろう……そう思った時だ。


「? どうしたのコリンク」


急に吠えだしたコリンク。
彼の見ている方へ視線を向けると、そこにあった光景は……。


「な、何!?」


何とこちらにムックルの群れが向かって来ているではないか!
このままじゃ冗談抜きでまずいことになる!


「コリンク、スパー……ムックル!?」


コリンクに指示を出そうとした時、腕に止まっていたムックルが群れへ飛んでいったのだ。
単独であのムックルたちに勝とうと言うのだろうか。


「……無茶だ」


本来なら私とあのムックルは先程出会った一瞬の関係で。
野生の関わりに手を出すのは危険である事は分かっているつもりだ。

……でも、あのムックルはきっと仲間はずれにされてしまったんだろう。野生の中ではよくあることだ。


「……っ」


あのムックルは他のムックル達より強いようだ。
だけど、いくら一つが強力な存在でも、数が多ければその力は抑えられてしまう。
……ほら、ムックルが押されはじめた。


「……コリンク?」


私の前に出てコリンクはこちらを振り返った。
その表情は「助けなくていいのか」と言っている様に見えた。


「……そうだよね。一瞬だけの関わりだけでも、助ける理由になる!」


コリンク!と指示を出せば、コリンクは電気を纏いながら駆けて行く。


「”スパーク”!」


青色の稲妻を纏い、コリンクはムックルへ技をぶつけた。
ムックル達は突然の乱入に驚いたようだが、すぐに標的をコリンクへ変えた。


「コリンク、殿をお願い!」


コリンクは「任せろ!」と言うように返事をした後、向かってくるムックル達に”スパーク”で迎え撃った。
その隙にムックル達によって穢してしまったムックルの元へ向かう。


「大丈夫!? 今手当てするから……!」


ムックルを抱き上げ、傷薬を使う。
薄らと目を開けてこちらを見上げるムックルに声を掛けながら手当てする。


「……よし。これで大丈夫よ」


ムックルの手当てが終わったと同時に、ムックル達の鳴き声が聞こえなくなった。
視線を向けるとどうやらコリンクが1人で全員を圧倒したらしい。……いくら電気タイプで相性が悪いとはいえ、まさか本当に全員を倒しちゃうなんて。


「コリンク、お疲れ様___」


コリンクに労りの声をかけようとした瞬間、コリンクの身体が輝き始めた。


「……!」


輝きが収まった後、そこにいたのは姿を変えたコリンクだった。
急いで図鑑を取り出し、進化したコリンクを確認する。


「……ルクシオ。ルクシオって言うのね」


こちらへゆっくり歩み寄ってくるルクシオ。
その表情は嬉しさを必死に隠しているような、そんな表情だった。


「おめでとう、ルクシオ!」


これでモウカザルに追いつけたね。
そう言葉を添えると、少し低くなった声でルクシオは返事をした。


「それと、殿ありがとうね。すごいよ、あれだけの数のムックル相手に勝つなんて!」


ルクシオは「当然!」と言うように鼻を鳴らした。
進化した喜びを隠しきれていないようだ。


「さて、この子を早くポケモンセンターに連れて行かないと」


私が施したのは応急手当だ。
ちゃんとした場所で治療して貰わなければならない。

私の腕の中で眠っているムックルを起こさないように、それでも急ぐようにソノオタウンへ向かった。
途中で野生のポケモンに出会ったんだけど、ルクシオが全員相手にしてくれた。


……進化して更にたくましくなったなぁ。
その成長を間近で見る事ができるのも、トレーナーの醍醐味だよねぇ。



***



「お預かりしていたポケモン達は元気になりましたよ!」

「ありがとうございます!」


ソノオタウンに着いてすぐポケモンセンターに駆け込んだ私。
その慌てぶりにスタッフさんは即座に対応してくれて、野生のポケモンであるムックルの治療も快く引き受けてくれた。

返ってきたモンスターボールを腰のベルトに付け、ムックルを抱きかかえる。
すっかり元気になったようで、元気な声で鳴いた。うん、やっぱり大きい。


「ムックル、私が関与できるのはここまでだよ」


ポケモンセンターから出て、ソノオタウンを出る。
204番道路に足を踏み入れ、ムックルを帰そうとするが……。


「……って、何その顔は……」


腕の中にいるムックルは、こちらを不思議そうに見上げている。
なんなら私の腕の中が居心地いいようで、ものすごくリラックスしている。
何故この子はこんなにも人懐っこいんだ……。


「……じゃあ、一緒に来る?」


そう声をかけると、待ってました!という様にムックルは鳴いた。
うん、そろそろこの大きい声に慣れてきたかも。


「分かった。これからよろしくね、ムックル」


モンスターボールを取りだし、ムックルにコンッと軽く当てた。
……手の中で揺れていたボールは、静かに停止した。





2021/10/08


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