おめでとう! ヒコザルは モウカザルに しんかした!



「ごめんねー、今日のジムチャレンジは彼で最後なんだ」


そう申し訳なさそうに謝ってきたヒョウタさんを思い出しながら、目の前に広がる光景を見つめる。
私の目の前ではコリンクとヒコザルがバトルしている光景が広がっている。
勿論ジムにだって営業時間がある。ずっと働いてたらブラックだし……。

しかしこの2匹はそれが不満だったらしい。
晩ご飯を済ませた後、2匹は「特訓したい!」と言いたげに私を外へ連れ出すものだから、付き合う事にしたんだ。


と言うわけで現在は207番道路にいる。
現在の時刻は夜の8時頃だ。


「うん、いい動きだよ。でもその後の動きが大事。守りに出るか攻撃に出るか……ヒコザルとコリンクの動きで次の動きを私が判断する。ポケモンバトルってトレーナーとポケモンのコンビネーションが鍵だからね」


これはバトルが強い幼馴染を見て研究して分かったこと。
2人は何よりもポケモンが大好きだ。だからよくポケモンを見ているし調べている。理想のポケモントレーナーだ。私の憧れでもある。


「じゃあ次は私の指示も入れてみよっか。じゃあまずはヒコザルからね。コリンクは自由に戦ってみて」


私からの指名にヒコザルは気合いの入った声で返事した。
コリンクはコクッと頷くと、ヒコザルと対面する。


「よし。いくよヒコザル!」


先制をとったのはヒコザルだ。
タイプ一致の技”ひのこ”でコリンクに攻撃を仕掛ける。


「……やっぱり速いな、コリンクは」


初めて戦った時もそうだったけど、本当にコリンクは速い。
コリンクの生態で考えると、彼は素早い方だと思う。

ヒコザルというポケモンも元から素早いポケモンだ。やっぱり似たもの同士は惹かれ合うのかしら。


「よし次! コリンクと交代……!?」


5分で交代と決めていたので、次はコリンク……と思った時だ。
草むらから飛び出してきた影。


「野生のイシツブテ……!」


見慣れたポケモン。
カントー地方でも見た事のあるポケモン、イシツブテが草むらから飛び出してきた。
一部のポケモンは夜になると活発化すると聞く。イシツブテは普段洞窟に生息しているから、夜になると活発になるのかな。


「! ヒコザル!!」


岩と地面タイプのヒコザルはイシツブテとの相性が悪い。
イシツブテの”いわおとし”が直撃し、遠くに飛ばされてしまった。

ヒコザルの元へ行って、急いで手当をしなければ。
しかし、野生のポケモンを野放しにするわけにもいかない。


「コリンク、”たいあたり”よ!」


彼はまだタイプ一致の技を覚えていない。だがコリンクは電気タイプなので、地面タイプを併せ持つイシツブテとは相性が最悪。だから覚えていたとしても使える技は”たいあたり”に絞られる。

岩タイプのポケモンはノーマルタイプの技を軽減する。
コリンクの”たいあたり”は効いていないようで、イシツブテから反撃を受けてしまった。


「……っ、このままじゃ……!」


完全に油断していた。
いくらクロガネシティが近いからって、夜に外出するのは止めるべきだった……!

イシツブテがコリンクに襲いかかろうとしている。
ふらついているコリンクに躱すように指示を出しても、あの様子では動けない。
どうすれば……。そう思った時だ。


「! 何……?!」


突如輝いた何か。
それは見覚えのある姿を形取った後、光が収まった。

そして素早い動きでイシツブテに攻撃を繰り出した。


「モウカザル……!?」


コリンクを庇うように前に現れたのはモウカザルだった。
……まさか、あのモウカザルって___


「ヒコザルが進化したの……?」


まさかこんなにも早く進化するとは思わなかった。
確かにバトル好きだから沢山戦闘を経験を積ませたけれど、それでも早くない……?!

それに、イシツブテに向けて繰り出されたあの技は”マッハパンチ”だよね?
岩タイプのイシツブテに効果は抜群だ。
……いける!


「モウカザル、もう一度”マッハパンチ”よ!」


気絶寸前のコリンクを抱えて、ヒコザル……いや、モウカザルに指示を出す。
モウカザルは返事をすると、素早い動きで拳を構え、イシツブテに向けて突き出した。

イシツブテは2回目の”マッハパンチ”を受けて、危険だと判断したのか逃げていった。
それはつまり、私達の勝ちというわけだ。


「やった! やったね、モウカザル!」


こちらに向かって走ってくるモウカザルを受け止めて抱きしめる。
進化した事が嬉しいのか、強敵に勝てて嬉しいのか、ぎゅうぎゅうと私に抱きつく。

……だが、ある呻き声でその空気は崩れた。


「あ、ごめんねコリンク。傷が痛むんだよね?」


私とモウカザルの間にいたコリンクが「痛い」と声をあげたのだ。
それでもコリンクはモウカザルに「ありがとう」と言うように鳴いて微笑んでいた。





2021/10/08


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