対 帝国学園



「帝国学園は広いなぁ」


観客席を回り続けて……何分たったかなんて計ってない。
何度目になるか分からない階段を登り降りをやっていると、


「何を企んでいるの!!?」


良く知る声が聞こえた。それも、鋭く怒りが篭もった声。
その声にビクッと身体が反応し反射的にフィールドの方を見ると、そこにはサッカー部のファンからマネージャーへと昇格した元新聞部であり僕に取って友達の___


「春奈……?」


音無春奈。……春奈がフィールドにいた。
僕の方ではなく、ある方向を見ておりその方向には鬼道さんがいた。
先程僕と別れた後、鬼道さんはフィールドの方へと向かって行ったのだ。


「信じないから!!キャプテンは騙せても、私は信じないから!!貴方は変わってしまった!!」


春奈の声は、今まで聞いたことのない声で。
怒っているような、悲しそうな……そんな声だった。
鬼道さんは春奈の言葉に返答する事なく、フィールドを去ってしまった。


「……二人の関係は一体……?」


春奈もフィールドを去ってしまい、この空間は僕一人だけになってしまった。


「……まさか、恋人同士?」


鬼道さんと春奈が……うん、合わないことはないでしょ。恋愛は人それぞれの形があるっていうし!
それに、春奈の容姿からに彼氏がいたことあっても不思議ではないよね!
……そんなこと、本人から一度も聞いたことないけど。
そもそも僕が恋愛話を振らないからなんだけど。
からかう事が好きだけど、真相とかきちんとした詳細は僕には正直どうでもいい。

……だけど、春奈のあんな姿、見たことがない。
でも最近、少し元気がないとは思っていた。

もしかしてその原因は鬼道さんなのかもしれない。
……何か力になれないかな。


「……ちょっと送ってみようかな」


携帯の電源を付け、チャットアプリを開く。
そして『春奈』と書かれた文字をタップし、トーク画面を開く。


「…………よし」


送信されたことを確認し、携帯の電源を落として罠探しを再開した。


“春奈、最近表情暗くない?”
“何かあるなら僕に言いなよ”
“話なら聞いてやれるからさ”



そのメッセージから返答が来ていた事に僕が気付くのは、試合開始数分前。





2021/02/20


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