対 帝国学園



雷雷軒から出て、帰路を歩く。
見えてきたのは河川敷がある橋だ。
そこから声がするので、サッカー部が練習しているんだろう。

御影専農中との試合前に大量発生していた偵察隊も、今では嘘のようにいなくなっている。
お陰で下校がスムーズになりましたとも。
…と、そういう事ではない。


「……せっかく勝利に導いてあげたってのに、何あれ」


河川敷にあるグラウンドが見える橋から、練習しているサッカー部を見つめる。
……別に、サッカー部が気になって見に来たって訳じゃないし?
と、やる気のない練習風景を見ていたら。


「監督がいないからだ」

「へー、監督が…………って」


後ろから声が聞こえた。
その声に普通に返していたが、今思えば此処には僕一人しかいなかったはずでは?
でもこの声、……聞き覚えがあるぞ。
そう思いながら後ろを振り返ると、そこには


「あ、ストーカーのお兄さんだ」

「鬼道だ」


帝国学園サッカー部のキャプテンの鬼道さん私服ver.がいた。
「もう、冗談なのにどうして真に受けちゃうのさ」と言いながら鬼道さんの方へと身体ごと向ける。


「でも、どうして監督がいないだけであんなに?」

「お前……フットボールフロンティアの規約を見たのか?」

「僕は観戦者だから、気にしなくていいもーん」


と、鬼道さんにそう言うと向こうは溜息をついた。


「……監督不在のチームは、フットボールフロンティアに出場出来ないんだ」

「え、そうだったんだ……」


僕は小学生部門の大会にしか出場したことがない。
小学生部門は大会側から監督が派遣されるのだ。……どんな風に人選しているかは知らないけど。
だから監督不在ってだけで試合に出られない、と聞いて驚いてしまった。


「それにしても……前に会った時より元気がないね?どうしたの?」

「…………実は、雷門にスパイを送っていたんだ」

「スパイ!?」


鬼道さんによると、雷門中に帝国学園から派遣したスパイが紛れていたのだと言う。


「で?誰のこと?」

「……一人は察する事ができるだろ。雷門の姿を見たら」

「…………まさか、顧問の先生?」

「ああ」


名前は知らないけど、サッカー部の顧問の顔は覚えてる。
なんか誰かに縋ってなきゃ生きていけない〜って感じの顔だったよね。…あれ、あんまり覚えていないかも。


「それともう一人」

「え?まだいたの?」


鬼道さんの言葉にそう言い、彼の視線の先を見る。
その先にいたのは……


「……土門、さん」


鬼道さんの視線の先にいたのは土門さんだった。
野生中との試合で見せたあの動きを見て、雷門に良い戦力が〜っと思っていたんだけど…。なるほど。
確かに何処か雷門のメンバーより能力が高いとは思ってはいたけれど、そうか。帝国学園出身だったのか……。


「どうしてスパイを?」

「……総帥の指示だ」

「総帥?」

「影山総帥。……俺達帝国学園サッカー部の監督だ」


鬼道さんの言葉に出てきた、『影山』という人物。
どうしてスパイを雷門に派遣するという指示を出したのだろうか。
帝国学園の実力に不満があるのだろうか。……悪くないとは思うけどなぁ。


「帝国の監督さんは、汚い手を使うね〜」

「汚い、か。……間違ってはいないな」


……あ、もしかして結構傷ついてる?


「ご、ごめん……気を悪くした……?」

「いや、気にするな」


鬼道さんはそう言って困ったような笑みを浮かべた。





2021/02/20


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