対 秋葉名戸学園



「……えっと、つまり?アニメかドラマか何だか知らないけど、その番組の中であった技かなにかを参考に編み出された必殺技って事ね」


長ったらしく言っている目金さんの言葉を、自分で分かりやすいように解釈して、納得する。
全部聞くつもりなんてない。分かれば良いんだから〜。

雷門のスローインで試合が再開。


「苗字!」

「僕にボールを下さい!」


僕にパスを出そうとした半田さんに向かって、目金さんが自分にボールをくれとパスを要求した。
ゴールの方から円堂さんが「半田ー!目金にボールを渡せー!!」と半田さんに言っている。
言われている本人、半田さんは「え〜っ!?」と困ったような顔をしてこちらを見る。

ま、確かにあの人は、帝国との練習試合で逃げ出した。
だけど……


『本気でやる気になっている奴は、ここ1番で必ず頼りになるんだ!』


試合前に、豪炎寺さんの代わりに自分が入るといった目金さんに、反対の声があがる中円堂さんはそう言ったのだ。
……その言葉、信じてみようかな。

こちらを見ていた半田さんに、目線で目金さんにボールを出すように促す。
それを見て理解してくれたのか、半田さんが目金さんにボールを出した。


「……分かった!頼むぞ、目金!!」


そう言って半田さんは目金さんに向かってボールを投げた。
ボールを受け取った目金さんはドリブルで上がっていく。


「此処は通さん!」


そう言って絶対走りにくいであろうポーズで目金さんに迫ってくる4番さん。
その時、秋葉名戸の監督がベンチから立ち上がった。…スイカを持って。
それを横目で見ていると、


「は!?」


なんとそのスイカをグラウンドへと……って、食べ物を粗末にするんじゃない!!
ん?
と言うことは、さっき松野さんが踏んでしまったスイカは…やっぱり本物?
わーっ!!そんなに沢山あって、すり替える道具にしてるなら一個くらい頂戴!!
……と、全然関係ない事を思っていた。


「正々堂々悪に挑む……、それが『ヒーロー』でしょう!」

「っ!?」

「スイカでボールをすり替えて、相手を欺くなど……ヒーローの技ではありません!!」


そう言って目金さんは4番さんを抜いた。
あ、スイカ割れた…。……なんだか、急にスイカ割りが恋しくなった……。
そうそう、東京に引っ越してくる前は地元の友達と砂浜でスイカ割りを……って今試合中!!
頭の中がスイカで埋まりそうになったので、首を横に振ってスイカを頭の中から消す。


「くっ…!止めるんだ!!」


次に目金さんに立ちはだかったのは、メイド喫茶で最初にあった野部流来人って人と漫画萌って人。
割と人の名前とかは覚えるの得意だよ。
と、どうでも良いことを思いながら、目金さんに目線を移す。


「漫画萌先生…、野部流来人先生…!僕は悲しい!!貴方達の書く『シルキー・ナナ』の勇気と愛に…、僕は幾度となく元気を貰いました!なのに、その作者である貴方方が、こんな卑怯な事をする人達だったとは……っ!シルキー・ナナに謝りなさい!!!」


長ったらしく何か言った後、二人の間を通過した目金さん!
目金さんが通過した後の二人は、何処か魂が抜けたような顔をしていた。


「すげー……、目金さん……」


次に現れたのは8番さん。
どんなスライディングだよ……と思いながら見ていると、


「設計中や合体中に攻撃を仕掛けるなど、ロボットマニアとしては失格です!!」


と言って目金さんがジャンプし、スライディングを躱した。
…やるじゃん、目金さん。
ごめんなさい。僕、貴方の事運動できない人って思ってたけど……。あの後ちゃんと練習に参加して、レベルアップしてたんだね。
……ちょっと見直したよ。


「これも、貴方の力の1つだと言うなら……」


円堂さんを見ると、ちょっと引きつった笑みを浮かべながら目金さんを褒めていた。
ジッと見ていると、見過ぎたのか目が合った。
「どうした?」と言いたげな顔で首を傾げ、円堂さんはこちらを見つめていた。
何事もなかったかのように円堂さんから目を逸らし、染岡さんに“ドラゴンクラッシュ”を打て、と言っている目金さんを見つめる。


「……悪くないかも、ね」


目金さんの説教効果で戦意喪失した相手チームは五里霧中を使用しなかった。
何とかゴールを守ろうと、秋葉名戸学園GKが「ゴールずらし!」と言ってゴールをずらしている所を見た。
しかし染岡さんのシュートは先程ゴールがあったところのコースを飛んでおり、変えることは出来ない。
そう思っていたとき、


「ぐあッ!?」


なんと目金さんは、自分を身代わりにシュートコースを無理矢理変えたのだ。


「…は、ははっ」


これはもう笑うしかなかった。
あ、心配してないわけじゃないよ?


「やっぱり面白い」


このチームはいつ見ても僕を楽しませてくれる。そう思いながら担架に乗せられている目金さんの元へゆっくりを歩みを進めた。





2021/02/20


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