対 野生中



ボールが豪炎寺修也に渡る。
だが、3人にチェックされては流石の彼も動けないか。

サイドから上がってきた11番の人に、豪炎寺修也はパスを出した。
11番の人はそのままシュート体勢に入る。
なるほど、空中がだめなら普通に地上から攻めようって事ね。地上だったら勝てるかも、って考えてそう。
でもさ、そこばかりに意識を移すのは良くないと思うよ?


「他の所に隙を見せたら、終わりだよ」


何事にも、有名な部分だけが強いわけじゃない。
他の部分だってそれなりに特訓してるさ。
そうじゃなきゃ、大会に出ても弱点を突かれてすぐに負ける。

僕が思っていた事は的中した。
空中戦がダメなら地上で攻める、という対策は何処の学校も思う事だろう。
その対策に、野生中が何も用意してない訳ないじゃない。たしか、この関東地区予選の中では割と強いんでしょ?
……対策済みだと思うけどねぇ。


「ほらね」


吹き飛ばされた11番の人を見てやっぱり、と思ってしまう辺り、サッカーに対しての脳はまだ衰えていないらしい。
11番の人を吹き飛ばしたのは野生中の5番の人だ。うわー…、あれ当たりたくないなぁ。だって今、凄い音したもん。
砂埃が晴れ、現れたのは足首を押さえている11番さん。


「足を痛めたか。確かに今の当たり方で怪我しないのは運が良すぎるか」


負傷した11番の人の具合はどうなのかが気になる。
マネージャーの女の人が11番の人の具合を見ている。
…あ、春奈来てたんだ。マネージャーの女の人の側で11番さんの様子を見ている友をジッと見る。


「…交代か。だとしたら、あの眼鏡の人が……って、あれ?新しい人がいる」


ベンチを見ると、帝国戦の時に逃げ出した眼鏡の人の隣に見たことの無い人が。
その人を見ていると、立ち上がって軽くアップを始めた。どうやらあの人が出るらしい。
背を向けている眼鏡の人の態度を見るからに、絶対あの新人さんに譲ったって事でしょ。


「ま、眼鏡の人の実力はそんなに無い事は見なくてもわかるから…。あの新人さんの実力を見せて貰おうかな」


そう思ってフィールドに入っていく新人さんを見る。…背番号は13番ね。
えっと、新人さんはDFに入るのか。じゃあFWは豪炎寺修也だけ…って、あれ?


「…見間違いじゃない」


なんと、DFである壁山がFWの位置に入っていた。
…失礼だけど、壁山ってサッカー部の中で1、2番目くらいに体力ない人じゃなかったけ?


「…何か考えがあるのかな」


栗松が言っていた特訓に、壁山がFWの位置にあげる理由が何かがあったのかも知れない。
これはもうちょっと詳しく聞いてても良かったかもしれない。いや、試合で初めて見る気持ちも捨てがたいし……。
うーん、まあそんな事は置いといて。


「その特訓の成果…、どういうものなのか見させて貰うよ」


試合再開のホイッスルが鳴り響いた。

野生中のスローインで試合が再開し、ボールは野生中の6番の人に渡る。
その人の前に現れたのは、あの新人さん。
さあ、どうする?13番さん。


「…!おぉ、やるじゃん」


必殺技で野生中の6番の人からボールを奪った。
あれは新人さんではないな。…何処かの学校でサッカー部に入っていた経験者だ。
良い戦力ゲットしたんじゃない、雷門?

13番さんが前線を走る豪炎寺修也と壁山にセンタリングをあげた。
…何かする気なのか?


「…飛んだ」


豪炎寺修也が壁山を呼ぶ。
それに壁山は返事をし、豪炎寺修也と共に飛んだ。
しかし、豪炎寺修也の背後には野生中のキャプテンが。


「…何かしようとした?」


壁山がお尻から着地…というより落下だな、あれは。
豪炎寺修也は壁山を踏んで空中を一回転して着地。
何かをしようとしたのは分かった。失敗に終わってしまっただけど。
ボールは野生中に奪われてしまい、前線へとパスされてしまった。


「……やっぱり、あの監督喋れないんじゃ…」


再び雄叫びを上げている野生中監督を見てそう思っていると、前半戦が終わった。
しかし壁山、豪炎寺修也にめっちゃ踏まれてたけど痛くないのかな…?


「珍しく点はいれられてないじゃないか、雷門」


スコアを見て、思ったことを口に出す。
さて、ハーフタイムが終わるまで音楽でも聴いていますか。





2021/01/17


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -