対 野生中



下校中

いつも通り途中で制服のリボンを解いて第一ボタンを空けて、片耳にイヤホンを付け音楽を流しながら帰っていた。


「…さっきから、叫び声が聞こえるんだよなぁ…。いや、悲鳴か?」


イヤホンを付けていない方の耳から聞こえるんだよね〜…。
いや、もしかしたら何処かの部活のかけ声かも……。いや独特だな。


「ギャアアアアアッッ!!?」

「飛んできたッ!?」


頭で考えていた事に自分でツッコんでいると、目の前に誰かが落ちてきた。
その人物は教室で見かける人物だった。


「あ、栗松」

「いってて…、ってあれ?苗字さん?」


同じクラスの栗松だ。
お尻打ったのか。…痛そう。


「やあ。……君、空飛べたの?」

「そんな訳ないでヤンス!!」

「へー、すごーい!」

「き、聞いてないでヤンス…」

「で、なんで飛んできたの?」


そろそろ僕の質問攻めに困惑してきたであろう栗松の為に本題を尋ねる。
実はクラスメイトという認識があるだけで、栗松とは会話した回数は多くない。
栗松は「やっと耳を傾けてくれたでヤンス…」と疲れた表情をを浮べていた。


「苗字さんってサッカー興味あるでヤンスか?」

「んー、少し?」

「そうなんでヤンスね!実は俺達、フットボールフロンティアに出ることになったでヤンスよ!」


「あ、フットボールフロンティアって分かるでヤンスか?」と言われたので、「あー、それ。春奈が言ってたから分かるよ」と言って知ってる事を伝える。
…まあ聞かれなくても知ってるけど。


「その初戦の相手が野生中って所で、高さだけなら帝国もしのぐって言われてて…」

「へー」

「それで、その野生中って所との対戦が決まってから色々な特訓をしてるでヤンスよ…」

「因みに、今なんの特訓してたの?」

「敵のスゴ技を受ける特訓と言う名の、タイヤ受けでヤンス…」

「た、タイヤ?サッカー部、中々ハードな練習してるんだね…」


サッカー部の練習メニューが気になったので、栗松に尋ねてみたんだけど……うわぁ、入りたくない……想像しただけでも震えが……。痛いの嫌いだから嫌だなぁ。
栗松の言葉とその表情を見て、昨日の部活勧誘に頷かなくて良かった、と内心ホッとする。


「あ、もう戻らないと!!じゃあ苗字さん、また!」

「またね〜。練習頑張って〜」


走り去って行く栗松の背中に、僕はそう声を掛けた。





2021/01/17


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