対 野生中

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「……豪炎寺、知り合いだったのか?」


先程出て行った人物の方を見ていた円堂が、振り返って首を傾げながら俺に尋ねた。


「知り合いではない。……一方的に知ってるだけだ」

「一方的に?」


次に俺の言葉に首を傾げたのは風丸だ。
先程の人物の事を2人に教える為、口を開く。


「…4年前の事だ。サッカー界に電光石火の如く現れた1人の選手。小学生ながらもその技術力とスピードはFF出場は間違いない、と言われるほど期待されていた選手だ」


一度話すのをやめて円堂と風丸の方を見る。
……円堂の目がキラキラ光ってる。「すげーな!」って言って興奮しているのが見て分かる。


「……まだ続きがある。それだけの能力を見ても、誰もが1番印象に残ったのは、あるシュートさ」

「シュート?」


風丸が俺の言葉に反応する。
俺はそれに頷いた。


「ああ。…そのシュートは、光の様に輝いていた。それから、その人物は“光のストライカー”と呼ばれるようになったんだ」

「“光のストライカー”…!すっごいな!」

「他にも色々な名前で呼ばれてるが、その選手を現わす時は必ず“光”という文字、あるいは光に纏わる言葉が入るんだ」


腕を上下に振って興奮している円堂と、その話を興味深く聞いている風丸。
俺が話す言葉を聴いて、2人はそれぞれの反応を示した。


「で、どうして急にそんな話を?」


風丸が首を傾げてそう俺に問う。


「先程出て行った人が…。もしかしたら、その“光のストライカー”かも知れないって事だ」


俺がそう言うと、円堂と風丸は大声を出して驚く。


「……彼奴が、苗字が“光のストライカー”かも知れないって事か…!!なら、彼奴がサッカー部に入ってくれれば…!」

「ああ、一気に戦力は上がるな!」


円堂が風丸を見ながらそう言った。
しかし光のストライカーについてはまだ続きがある。


「…だが、その“光のストライカー”と呼ばれた選手は、1年前に姿を消したんだ」

「え…。どうして?」

「わからない。…怪我を負った、と言う噂が流れているが、噂だから事実とは断言できない」

「そうなのか…」


俺の言葉に円堂が残念そうに表情を沈ませる。
少し雰囲気が暗くなった時、コトッと軽い音が聞こえた。


「できたぞ」

「ありがとうございます!」


音の正体は皿だった。どうやら頼んでいたものができたようだ。
俺は自分が頼んだものを取って、自分の目の前に置く。


「…」


先程までそこに人が座っていた椅子を見て、自分の手を見る。

……“光のストライカー”、苗字名前。
やっと近くで確認出来たその顔は……間違いない、本人だ。
だけど…。


「…細かった」


掴んだ腕が凄く細くて驚いた。
その腕は、まるで女子のように細くて。


「…そんな訳ない」


首を振って浮かんだ考えを消す。
苗字名前は男子だったはずだ。
人は体格に個体差がある。身長も思っていたより小さかったから恐らく成長期に入っていないんだろう。
しかし、あれだけの実力がありながら、筋肉がそんなに発達してないとは……。


「豪炎寺ー?ラーメン伸びるぞ」

「! あ、あぁ」


円堂の言葉で我に返り、麺を口に含んだ。





2021/01/17


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