微かな光が光輝になるまで



真太郎がチームに加入して二週間。
いつも通り練習場所へ向かうと、何故か端に集まっているチームメイトを発見。一緒に来ていた兄さんを見上げると、何処か見ているようで、僕もその視線を追った。


『真太郎と……誰?』


グラウンドには真太郎と、見た事の無い男の子。どうやらみんながグラウンドの端にいたのは、あれが原因だったみたいだ。

兄さんも気になっているようで、腕を組んで観察している様子。なんとなく合わせようと、僕もグラウンドへ視線を移した。


『ふんっ、来たな颯太!』


真太郎が見知らぬ男の子に指をさしながらそう言った。どうやらあの男の子はソウタというらしい。
藍色のおかっぱみたいな髪型が印象の男の子だ。けど、片目を隠しているみたいだ。何でだろう?


『なんで片目を隠してるのかな。見えにくいだけだと思うのに』

『あれは眼帯って言うんだ。何か障害があるのかもしれないね』

『しょうがい?』

『うーん、なんて言ったら良いかな……事情がある、いやこれも難しいか……。目が悪いから隠しているのかもしれないよ。でも、眼帯を着けているって事は、あまり聞いてほしくない内容かもしれないから、無理矢理聞いちゃダメだよ』

『はーい』


当時の僕は眼帯を着ける理由なんて知らないから、兄さんの言うことを聞いてたっけ。


『その台詞、僕が来たばっかりだったら言っても良いけど、そっちが来るの遅かったじゃん』

『う、うるせーなっ。細かいことはいいだろっ!』

『それもそうだね。君が遅れるとかどうとかよりも、外野が気になるんだけど。誰?』


そうたと呼ばれていた男の子がこちらを見る。鋭い赤い瞳が、当時はちょっと怖かったな。


『今は彼奴らのことかんけーねぇよ』

『そう。じゃあさくっと君に勝って教えて貰うとしようかな』

『その口を今から後悔させてやるさ!』


真太郎は持っていたボールを地面に落とし、それを男の子に蹴った。男の子はそのボールを難なく片足で受け止めた。


『そんじゃ、はじめよーぜ』

『どうせ奪えないくせに。早く気づいた方がいいよ』


二人が位置に着いた。そして、男の子が動いたのを合図に始まったようだ。


『あの、そうたという男の子……真太郎に負けないくらい良い性格してるね』

『良い性格?』

『うん、悪い意味でね』


確かに、真太郎もだいぶ良い性格してたけど、あの男の子もいい性格してたんだよね。そりゃあ真太郎もあんな感じになるわけだ……。


『じゃ、俺は審判でもしようかな』

『え、兄さん!』


頼まれてもないのに、兄さんは審判をしに向かった。ものすごく楽しそうに。兄さんが行ってしまって周囲に誰もいないので、チームメイトの元へ向かう。


『あ、名前ちゃん。やっほー』

『やっほー空。みんなアレを見てるの?』

『そうそう。なんか怖そうだったから黙って見てたんだけど、真太郎の友達みたい』


いや、あの会話聞いてたら友達って出ないと思うけど……。流石に幼かった僕でも友達とは思わなかったんだけど、空は友達って受け取ったんだよね。


『友達じゃないと思う、空』

『えぇっ、そうなの?!』

『多分顔見知りとかじゃないか?』

『うーん、剛兄さんが言うならそうかも?』


空の事は置いておき……真太郎と、見知らぬ男の子そうたの方だ。


『もしかして観客? そんなに自分が負けるところを見て貰いたいんだ』


うわぁ、今だから思うけど、これ煽りだったのかな……。ちなみに当時の僕はどういう意味で言っているのか分からなかった。


『残念。お前の負ける姿を見て貰うためさ!!』


いや、ただ普通に練習に来ただけなんだけど……。多分この場にいたチームメイト全員が思ってたと思う。


『それは僕に勝ってからいいなよっ!!』


そう言って男の子は真太郎を抜こうとドリブルを続ける。しかし、真太郎がその行く手を阻むため、中々抜き去る事ができない。


『ちっ、いつもならもう抜いてるのに……!』

『貰った!!』

『なっ!?』


遂に___真太郎がボールを奪った!


『うそ、でしょ……?』


男の子は真太郎からボールを奪い返しに行かなかった。どうやらボールを奪った時点で勝敗が決まるゲームだったみたい。
当時はそれが分からなかったけど、兄さんが手を鳴らしたことで終了したんだと理解した。


『わーーー!! 真太郎が勝った、勝ったよ亜久!!』

『見てたから分かる。あと苦しい』

『名前ちゃんめちゃくちゃ練習付き合ってたもんね、嬉しいでしょ!?』

『う、うんウレシイ。でもそれは二人にも言える事だよ』


空ってば自分の事の様に喜んでたな。
だって見ていたら分かったんだもん……真太郎が勝ちたかった相手は、あのそうたって子だから。

兄さんに言われ、僕達は真太郎の練習相手になっていた。彼の努力が今、現実となったんだから嬉しいと言えば、嬉しかった。ま、勝ちたい理由が歪んでたのは置いといて、だけど。


『じゃ、褒めに行ってあげようか』

『賛成! みんなっ、行こう!』


僕と空、亜久以外にも真太郎を応援していた人はいる。なんだかんだ新しいメンバーだったからみんな真太郎に協力的だったんだよね。

空のかけ声と共にみんなでグラウンドへ入る。さて、あの時の僕は真太郎になんて声を掛けたんだっけな。





2024/01/31


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