対 真・帝国学園


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名前が帰路を探す中、真・帝国学園のグラウンドでは試合が行われていた。
現在は前半戦が終わったところで、スコアは真・帝国学園が1、雷門が0となっている。何故このような結果になっているのかというと……。


「佐久間、源田……」


雷門全員が佐久間、源田を見つめる。その中でも特に気持ちが強いのは、鬼道だ。
久しぶりの再会だというのに、二人は変わってしまっていた。それも、鬼道を敵視するという、悲しい形で。


「二人のためには、試合を中止した方がいいのかも……」

「そうだな、そうすれば禁断の技を使わせずに済む」


禁断の技___それは、帝国学園では協力が故に使用を禁じられた技を指す単語だ。その技を使い続ければ試合続行は不可、下手をすれば二度とサッカーが出来なくなってしまうと言う。

木野、土門の言う通り、使わせないという視点で言えば、このまま試合を中止するのが正解だろう。



「___試合中止は認めないわよ!」

「監督……!」



しかし、現雷門の監督、瞳子はそれを認めなかった。


「後半は私の指示に従って貰うわ。吹雪くんはFWに戻って。みんな勝つ為のプレーをしなさい」

「それじゃ、佐久間くん達が……!」

「これは監督命令よ! 私の目的はエイリア学園を倒す事、この試合にも負けるわけにはいかない!」


監督命令と言われてしまえば、誰も口を出せなかった。
沈黙が続く中、それを破った者がいた。


「……試合を続けよう」

「鬼道、」

「確かに中止すれば、佐久間達の身体を守ることはできる。……だが、この試合は佐久間達の目を覚まさせる為の試合。今の彼奴らには、サッカーを通してでなければ分かって貰えないんだ。勝つことに禁断の技など必要ないと言うことを」


それは鬼道だった。
相手は真・帝国学園。元は自分のチームメイトだった者が多く所属している。想いは誰よりも強い。


「もし、ここで試合を止めれば佐久間達は完全に影山の影響下に置かれてしまう! ……そして、いずれあの技を使って、二度と試合が出来ない身体に……」


そう語る鬼道の頭にはある男が浮かんでいた。
黒いサングラスを掛け、何かを企む怪しい笑みを浮べた影山だ。


「やはり、この試合で救い出すしかない!」

「いいんだな?」

「構わない」

「……分かった。でも、絶対佐久間達にあの技を出させないようにしよう。何か方法があるはずだ」


円堂は鬼道の意思を受け取り、頷いた。
そして、皆に禁断の技を使わせないようにしようと声を掛けた。その円堂の声に周りは頷く。


その中、鬼道はどう試合を作ろうか考えていた。
吹雪をFWに戻すという事は、攻撃力が上がる代わりに守りが薄くなる。それはつまり、佐久間が禁断の技___”皇帝ペンギン1号”を使う可能性が高くなると言う事だ。

また、雷門のシュートのチャンスが増えれば、源田が使う禁断の技___”ビーストファング“を使う可能性も高まる。


鬼道は悩んでいた。どのようにすれば、二人に禁断の技を使わせず、かつ試合に勝てるかを。その方法が、今の鬼道には浮かばなかった。


「___俺に任せな」

「吹雪」



そんなとき、声が聞こえた。その声の主は吹雪だった。


「見てな、源田って奴があの技を出す暇もねーくれぇ、必殺技をぶちかましてやるよ」

「俺も協力するぜ!」

「吹雪、染岡……」


吹雪と染岡の言葉は、今の鬼道には良い意味で刺さった言葉だった。
そんな鬼道の方に誰かの手が乗る。


「大丈夫さ、鬼道。佐久間にはボールを渡さない、サッカーが出来ない辛さは俺が一番分かってる」

「一之瀬……」


その手の主は一之瀬だった。
彼は一時期サッカーが出来ない身だった。だからこそ、禁断の技によってサッカーができなくなってしまうという事実を現実にさせたくないのかもしれない。

暫く一之瀬を見つめていた鬼道。だが、視線を感じたのか、前を向いた。彼の視界の先には、雷門のメンバー。その一番前に円堂がいた。


「サッカーが好きな奴に、敵も味方もない! ___やろうぜ!」


円堂のまっすぐな言葉に、鬼道は不安な表情が消えた。そして、笑みを見せて円堂の言葉に頷いた。


「二人を守って、そして試合に勝つんだ!!」

「「「おうッ!!!」」」


円堂の声に皆が声を出した。気合いを入れるかけ声だ。
……その声が、とある人物に届いた。


「! 今の、雷門のみんなの声?」


それは、真・帝国学園内を彷徨う名前だった。


「……確か、こっちからだ! もうっ、僕逆方向を歩いてたなんて!」


名前は仲間の声が聞こえた方へと走り出した。……彼女が辿り着くまで、もう少し。





2023/9/03


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