対 真・帝国学園



「ねぇ春奈、さっきの音って」

「わ・す・れ・て!!!」

「まだ何も言ってないよ」


現在地、愛媛。
通り道にあったコンビニに、キャラバンは停車した。

各自、好きなものを買っている最中だ。僕は春奈と一緒に行動していた。


「木暮のイタズラだろう? みんな分かってるって」

「それでも恥ずかしかったの!!」

「ま、女子にするイタズラじゃないよね」


春奈の悲鳴に近い怒鳴り声。
それは、木暮が春奈の席にブーブークッションを仕掛けたから、であった。

僕もイタズラ好きな方だけど、流石にそれはないなって思ったよ。うん。
そう思いながら、僕はあるものを手に取る。


「相変わらず好きねぇ、それ」

「飽きないんだもーん」


僕が手に取った物。それはラテだ。それも、様々な味の種類があるシリーズものだ。

実は僕、コーヒーが大好きなんだ!
前にブラックコーヒー飲めるって言ったら驚かれたなぁ。


「じゃ、さっさと会計しちゃいましょ」

「おー」


ラテと適当な食べ物を購入して、僕は春奈と一緒にコンビニを出る。


「私、木野先輩に用事があるから」

「オッケー。じゃあ僕はキャラバンに戻るよ」


キャラバン前で僕と春奈は別れる。キャラバンに乗り、自分の席に向かうとそこには既に人が。


「お、帰ってきたか」

「お帰り、名前ちゃん」

「ただいまです、染岡さん、吹雪さん」


僕より先に買い物を済ませていたらしい、染岡さんと吹雪さんだ。二人は僕を通すために席を立った。お礼を伝えて僕は自分の席に座る。


「何を買ったんだい?」

「ラテと適当にパンを!」

「ラテなんて洒落たもん飲んでるじゃねーか。苗字のくせに」

「それどういう意味です、染岡さん?」


僕が席に座った後、染岡さん、吹雪さんと席に着いた。
そう言えば僕が自分の席を見た時、2人は何か話していたような。


「あの、さっきまで何話していたんです?」

「あぁ、帝国学園についてだよ。吹雪は知らねーからな」

「名前ちゃんも知ってるんだ」

「はい。とは言っても、試合をしたわけではありませんが」

「そうなの?」

「こいつ、俺達雷門がFFで優勝してからサッカー部に入ったんだよ」

「でも、名前ちゃんはサッカー経験者だったよね?」

「ちょっとした事情で……」


それより、帝国学園について何を話してたんですか?
無理矢理僕の話から、2人が話していた内容に戻させる。


「帝国学園の強さについてだよ。戦ったことがないから、想像できなくて」

「それについては、実際に戦った染岡さんから伝えた方がいいですね」

「だな。……帝国学園は俺達が勝つまで、無敗だった。最初、俺達雷門は手も足も出なかったんだ」


染岡さんの言葉で思い出すのは、帝国学園と雷門中の練習試合だ。当時の雷門中のサッカー部は無名中の無名だったから、何で練習試合を申し込んだのか分からなかったんだよね。

……後に、目的は僕と豪炎寺さんのデータ収集のためだと、鬼道さんから伝えられたけど。


「でも俺達は、特訓に特訓を繰り返して、ついに彼奴らに勝ったんだ」


FF予選試合、決勝戦。
あの試合は僕も熱中したなぁ。あの練習試合でボロボロだった彼らを知っていたからこそ、ね。


「だから、帝国だろうが真・帝国だろうが絶対に負けない! それに、今じゃ俺達最強コンビがいるんだしな!」

「……ふふっ、そうだね」


2人の様子を僕はパンをかじり、ラテを飲みながら黙って聞いていた。
……初めて会った時、二人は仲が悪かった(というより、染岡さんの一方的なものだったけど)から、今の二人しか知らない人に教えたら驚くかもなぁ。

そう思っていると、ズコッと音が聞こえる。どうやらラテを飲み干してしまったみたいだ。一口サイズに残ったパンを口に放り、数回咀嚼した後呑み込んだ。


「それじゃあ僕、これを捨ててきますね!」

「おう」

「いってらっしゃい」


二人に見送られて、僕はキャラバンの外に出た。
……真・帝国学園か。一体どんな奴らなんだろう。そう思いながらごみ箱にからになったラテの容器とパンが入っていた袋を捨てる。

さて戻ろっと。
そう思って振り返ろうとしたときだ。



「っ!?」



誰かに腕を掴まれたのは。





2023/8/17


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