対 ジェミニストーム



「やったあっ!」

「勝った、勝ったぞ……宇宙人に勝ったんだ!」

「おうっ!」

「あたし達は勝ったんだ!!」

「ああっ!」

「感無量ッスううううっ」


周りが笑顔に包まれている。
それが余計にエイリア学園に勝ったことを感じさせた。


「こんなバカな……我々がただの人間ごときに……?」

「地球にはこんな言葉があるわ……3度目の正直」

「……っ」


エイリア学園の方を振り返れば、そこには夏未さんが何かを言っていた。
そしてこちらへと戻ってきた。


「何話してたんですか?」

「話す程度の会話はしてないわ。言い返してあげたのよ」

「……? ふーん」


何を話していたかは良いとして……。
試合は僕達の勝利。
負けたのは……エイリア学園。

エイリア学園は「ありえない」と言っている様な表情で僕達を見ている。
そんなエイリア学園の元に……いや、レーゼの元に自然と僕の足は動いていた。


「……なんだ、光のストライカー。我々の実力に何か思うことがあったか」


エイリア学園の元で足を止めると、レーゼがそう口を開いた。
……実力に対して、か。


「弱いとは思ってない。強かったよ。……できればこんな形で会いたくなかった」

「理解できない。どういう意味だ」


いまだに鋭い目線でこちらを見つめるレーゼに、僕は素直に思っていた事を口にした。



「そんなに実力があるのに、どうして破壊のために使うの? ___サッカーは楽しくやるものでしょ?」

「!!」



僕の言葉に目を見開くレーゼ。
宇宙人だから分からなかったのかな。サッカーは楽しくやるものだって。
競い合うからこそ楽しいんだってことを知ってほしい。


「……理解、できない」

「できないなら理解できるまで付き合ってあげても良いよ?」


僕がそう声を掛けると、レーゼは顔を俯かせた。
微かに見えるその表情はどこか焦りを感じさせる。


「……お前は。お前達は知らないんだ……本当のエイリア学園の恐ろしさを」

「え……?」


レーゼの言葉に首を傾げる。
どうしてそんなに怯えた顔をしているの……?


「我々はセカンドランクにすぎない。我々の力など、イプシロンに比べれば……」

「イプシロン……?」


レーゼの言葉にそう言葉が漏れた瞬間だった。


「無様だぞ、レーゼ」


突如、レーゼの名を呼ぶ声が聞こえた。
よく見れば辺りに黒い霧みたいなものが。


「っ!?」


そして眩しい光が発生し、思わず目を瞑る。
光のある方を見れば、逆光で姿は確認できないけど誰かがいる。
あそこにいる人の誰かが、レーゼの名前を呼んだの?


「え……っ?」


光が収まり、やっと姿を確認できたと思えば……そこには見覚えのある顔が一つあった。
その集団の前に立つ男の人……見覚えがある。
あの顔は……あの顔は……!


「デサーム様……!」

「覚悟はできているな? お前達を”追放”する」


誰かが地面に着いたような音が聞こえる。
振り向けばレーゼが膝を付いていた。


「苗字、こっちにこい! 早く!!」


遠くで円堂さんが僕を呼んでいる。
なのに僕は動けなかった。

あれは新たな宇宙人?
でも、でも……あの宇宙人の顔は……!!


「苗字!!!」


黒いサッカーボールがこちらに向かってくる。
頭で分かっているのに動かない。

近くでジェミニストームの焦りの声が聞こえる中、黒いサッカーボールがその中心で停止し、光を放った。
眩しいその光に思わず目を瞑った……その時だった。



「___ごめんね、名前ちゃん……嘘付いて」

「え……?」



その言葉と同時に思いっきり突き飛ばされた。
その場に尻もちを付くと同時に、___目の前からジェミニストームが消えた。


「我らはエイリア学園ファーストランクチーム『イプシロン』。地球の民達よ、やがてエイリア学園の真の力を知るだろう」


その声と共にイプシロンと名乗ったエイリア学園は光に包まれ消えた。
……だけど、僕の頭はある事で混乱していた。


「……ぁ、あぁ……っ」


あの……あの言葉遣いは……!


「大丈夫か? 苗字」

「……」

「苗字?」

「しっかりしろ、苗字!」


『名前ちゃんっ!』


___リュウちゃんにしか、聞こえなかった……!!





2022/2/20


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