対 ジェミニストーム



試合開始のホイッスルが鳴り響く。
雷門のキックオフで試合開始だ。


僕は吹雪さんの前に配置されたが、攻めに行くよう指示は受けていない。
どうやら初めは守りに入るよう瞳子姉さんから指示があったようだ。
なので僕はこのまま待機である。


「……」


僕の視線の前にはレーゼと名乗ったあの宇宙人がいる。
さっきのこともあって、目を合わせられない。

……ダメだ。試合中は余計な事を考えちゃいけないって言われてきたじゃないか。
首を横に振って、考えていたことを吹き飛ばそうとした……けど。


「……っ」


染岡さんに抜かれても平然とした表情をしているレーゼが視界に映る。
そうだ、別の場所を見よう。今ボールがある所を……


「名前ちゃん」

「は、はいっ!!?」

「大丈夫? さっきからどこかそわそわしているように見えるけど……」

「す、すみません……。ど、どうやら初めてのエイリア学園戦でき、緊張してるみたいで……」

「そうなんだ。なら、僕がリラックスさせてあげる♪」

「け、結構です!!」


この人全く緊張してないな!?
ていうか今、全国放送されてるんだよね!?
テレビに映っちゃったらどうするのさ!!


「……ほら吹雪さん! 試合に集中しましょ!」

「はーい」


……でも、吹雪さんのお陰で頭がすっきりした。
これなら試合に集中できる。


「……ありがとう、ございます」

「! ふふっ、どういたしまして」


もしかして、僕が緊張しているのを分かって話しかけてくれたのかな。
気遣いも出来る顔の良い人って、完全にモテるタイプだ……って、今度は別の事で試合に集中できなくなる!


「さ、ボールは今どこかな〜?」


吹雪さんのお陰ですんなり試合に意識を戻せた。

ふむふむ、エイリア学園……ジェミニストームの動きは確かに速い。
だけど、目で追えないわけじゃない。


「はぁ!」

「く……っ!」

「ふッ!!」


他のメンバーも目で追えているようで、ジェミニストームの動きに着いていけているみたいだ。
特訓の成果、出てるんじゃない。


「これを吹雪さん風にいうと、『風になっている』ですかね?」

「うん……! みんな、風になれたね……!」


勢いは雷門に来ている。
でも、ここで調子づいて油断してはいけない。


「”ザ・タワー”!」


塔子さんが相手からボールを奪った。
そのボールは鬼道さん、風丸さんへと繋がった。


「”疾風ダッシュ”!」


風丸さんが必殺技で相手を抜き去る。
あれ、前より速くなってない……!?


「風丸さん、頑張ってたもんなぁ」


でも、その様子はどこか焦っている様にも見えたのは気のせいかな。
今もどこか、風丸さんの走り方に風丸さんらしさを感じない気がするんだ。


「いけっ、染岡!」


ボールが染岡さんに渡った。
染岡さんの正面はゴール。先取点どうだ……!?


「”ドラゴンクラッシュ”!」


染岡さんの必殺シュートがゴールへと向かっていく。
さて、相手GKのお手並み拝見だ。


「”ブラックホール”!」


相手も必殺技で対抗。
染岡さんの必殺シュートは吸い込まれるように止められてしまった。


「クソッ!」

「惜しいぞー! その調子でどんどんいけーッ!」


うん、結構固そう。
これは突破しがいがある。

でも、そう簡単に決めさせてくれないだろうし……。


「……!」


いろいろ考えながらボールを目で追っていた時、頭の中で浮べていた内容が吹き飛んだ。
ジェミニストームのGKがボールを回した相手は……レーゼだ。

レーゼはボールを受けてこちらに向き直った瞬間、急加速して接近してきたではないか!
僕はその速さに反応が遅れてしまった。


「……っ」


いや、反応に遅れたのはそれだけじゃない。
……まだ僕は引きずっている。

レーゼがリュウちゃんじゃないかって事を。





2021/12/16


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