対 ジェミニストーム



翌日

今日も今日とて練習をしていたとき。


「! 空が……」


突然黒い雲が空を覆い、辺りが暗くなった。


「……来る」

「え?」

「エイリア学園だ」


隣にいた鬼道さんが教えてくれた。
あの空はエイリア学園が現れる前兆みたいなものだと。


「……」


今の今まで思い出さないようにしていた。
あの日見た映像に映った宇宙人……映像が少し乱れていたから分かりづらかったけど、あの顔は……。


「違う、気のせいだ……見間違いだ」

「どうかしたのか?」

「え?」

「何か言ってる気がしたんだが……」

「あはは、気のせいですよ! エイリア学園との初対面なので、緊張してるのかなぁ!?」

「……ま、多少の緊張感は持ってほしいがな」


僕以外の雷門のメンバーはエイリア学園を知っている。
だから、どんな存在なのか分かっているからこんなに緊張感があるんだ。


黒い雲が更に濃くなる。
そして、白恋中校舎に集中したと思えば……黒い雲が晴れた。
そこに現れたのは___妙な格好をした人達。

僕はその中心に立つ緑色の髪の少年に目を見開いた。


「待ってたぜ、エイリア学園! 勝負だ!!」


円堂さんがボールを少年に蹴り上げる。
少年は何食わぬ顔でボールを片手で受け止めた。


「これ以上、サッカーを破壊の道具にはさせない!!」


周りの緊張感が更にあがった。
だけど僕はその真逆で……


「……嘘、でしょ……?」


7年前の記憶だけど、僕ははっきりと覚えているんだ。
あの顔は……


「似てる……!」


『名前ちゃんっ』


当時、まだ人見知りだった僕に優しくしてくれた男の子。
『緑川 リュウジ』……リュウちゃんに似ているんだ。

僕の中でのリュウちゃんの顔は7年前で止まっている。だから、あれがリュウちゃんだと断言できる証拠はどこにもない。


……そうだ、瞳子姉さん!
慌てて瞳子姉さんの姿を探す。……いた!

瞳子姉さんなら何か知ってるはず……だってリュウちゃんも僕がいた孤児院で暮らしていたんだから!
そう思ったけれど、瞳子姉さんの表情はどこか険しくて……。


「またお前達か。何故ここにいる」

「俺たちが代わりに戦う!」

「……ふん、地球人の学習能力は想像以上に低いな。二度も敗れたのに何故分からないのだ? 我々には勝てない、と!」

「宇宙人の想像力も大したことないね! あたしたちがパワーアップしたとは思わないの?」

「……ほぅ」


リュウちゃんに似た宇宙人は僕達を見下ろす。
そして___目があった。
目が合った瞬間、僕の心臓が跳ねた。
きっと僕は動揺している……こんなんじゃ試合に集中できない……っ。


「地球にはこんな言葉がある……二度あることは三度ある、と!」

「! く……ッ!」


宇宙人が円堂さんにボールを放つ。
円堂さんはそのボールをしっかりとキャッチした。

……でも、僕にはそんなことよりも気になった事があった。


「こと、わざ……」


リュウちゃんは昔から諺に詳しかった。
だから今、あの宇宙人が諺を放った時……何か確信に近いものを感じたんだ。

あの宇宙人は……いや、あの少年はリュウちゃんじゃないかって。





2021/11/14


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