参戦! 雪原の皇子



「お前、ほんっとう下手くそだな〜」

「くうぅぅ……! 言い返せないのが悔しい……!」


練習後
夕食の時間になったため、白恋中の教室に向かっている僕達。

僕の事を弄っているのは塔子さんである。


「大丈夫だよ、名前ちゃん。僕が手取り足取り教えてあげるから」

「なんかその言い方嫌なんですけど……」

「だったら早くスノボに慣れなよ〜」


そう言って先に行ってしまった塔子さん。
ぐぬぬ……絶対に塔子さんより上手くなって言い返してやる……!


「光のストライカーは雪が弱点なのか」

「鬼道さんって人の弱み知るの絶対好きですよね」

「さあな」


チラッと見ればニヤリと笑っている鬼道さん。
絶対合ってる。この人、人の弱み握って楽しむタイプだ!!


「そういえば名前ちゃんってとっても速いよね。どうやって身に付けたの?」

「気になるな」


突然の吹雪さんの問い。
その問いの答えを鬼道さんも知りたいらしい。


「どうやって身に付けた、か。それはもうずっと走ってたからとか、砂浜走ってたとかそれくらいですかね」

「確かに砂浜は走りにくいから、鍛えるには適しているな」

「ただ走ってただけなの? きつそうだなぁ……」

「そうですか? 僕はあんまり苦ではないですよ。その時は一緒に走ってくれる人がいたので!」

「一緒に走ってくれる人? 誰?」

「僕の兄さんです! 僕に速さと体力が長けてるって教えてくれたのも兄さんなんです」

「そっか。名前ちゃんにはお兄さんがいるんだね」

「はい! すっごく優しいんです! あ、でも怒ったら結構怖いです……」


兄さんは怒鳴って怒るタイプではなく、笑ってない笑顔で怒るタイプだ。所謂目が笑ってないって奴。
そして拳骨がすっごく痛い。

でも、ちゃんと僕が悪いときにしか怒らないから、理不尽なことはしてこない。


「兄妹、か……」

「? どうかしましたか?」

「え? ううん、なんでもないよ」


そう言って吹雪さんは微笑むと、僕の背後に回って背中を押してきた。
なーんか今日一日だけですごいスキンシップされた気分なんだよね……。


「それよりお腹空きましたねー。晩ご飯、なんでしょうね?」

「それは着いてからのお楽しみだ」


吹雪さんに背中を押されながら着いた教室。


「「「いらっしゃ〜い!」」」


勿論出迎えてくれたのは、我らが雷門のマネージャー3人である。
奥には古株さんもいる。

どうやら机のセッティングもしてくれていたようだ。
僕は空いてる席の前に立って、今日の夕食の献立を見ようとした。


「えぇ〜っ、これだけえええぇっ!?」


壁山が残念そうに言うので、献立を見てみると……あれ、なんか少なくない?


「も、もうちょっとほしいなぁ……」

「こうなったら、おかわりしまくってやるッス!」

「悪いね、おかわりなしだ。腹八分目で頑張りな」

「「「えぇ〜〜〜っ!!」」」


僕もおかわりして……と思ったところに古株さんの言葉。
どうして……お腹いっぱい食べたいのにいいいぃ。


「監督の指示よ。スピードアップのため、筋力強化を意識した食事を用意したわ」

「カロリー計算もバッチリです!」

「それと、一度口に入れたら30回噛むようにって!」

「さ、30回!?」

「消化吸収率が高くなるんですって!」


なんでさ、瞳子姉さあああん……。
厳しいところは全然変わってないね……。

仕方ない。
瞳子姉さんの考えなら30回噛んで食べよう!





2021/11/14


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