対 尾刈斗中



視界に映った豪炎寺修也の横に、黒い車…先程僕がチラ見した車が止まっていた。
何か話してるのかな…。って言うか、そこで会話されると迷惑なんだけど。


「…会話が終わるまで、サッカー部の練習見学しますか」


再び橋の手すりに肘をついて、顔を乗せてサッカー部の練習を眺めた。
イヤホンの片耳を外して、会話内容を盗み聞きする。…まあ、はっきり聞き取れている訳じゃないけど。


「……終わったかな」


車が走り去っていく音がしたので、会話が終わったのだろう。
そう思い、視界を横にしようとした瞬間。


「…おっ」


11番の人が、明らかに先程とは違うシュートを放っていた。
そのシュートは、蒼いドラゴンが吠えながら飛んでいるように見えた。


「…必殺技、ね。……良いじゃん、かっこいいよ、それ」


11番の人を囲んで喜び合っているサッカー部達を見つめていると、誰かがその輪に近づいて来ている事に気付いた。


「…話終わったんだ。んじゃ、行こうかな」


僕は行くところがあるんだ。此処に留まる理由はもうない。
そう思って方向を変えた時だ。


「あー!!君、この前の!!」

「ん?」


河川敷から聞こえた声に再びその方向を振り返る。
そこには、僕を見上げるサッカー部達が。


「あ、見つかった」


彼らに特に用はないので、とりあえず手を挙げて反応しておく。
河川敷に降りていく気はないので、そのまま目的地へと足を進めた。


「…前に誘った人間を覚えてるなんて、律儀な奴だな。……ま、サッカー部に僕という“選手”を知ってる人なんていないだろうし。知ってるとしたら、クラスメイトとしての僕だろうし」


まあでも、服装が違ったら僕だって気付かれない事多いんだよな。まあ、いっか。
そう呟いて、外していた片方のイヤホンを付けた。





2020/12/27


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