参戦! 雪原の皇子



「起きなさい、朝よ」

「うぅん……」


身体を揺さぶられる感覚に目を開ける。
太陽の光に目が眩み、眠気が吹き飛んだ。


「おはよぅ……、瞳子姉さん……」

「ええ、おはよう名前。顔洗ってきたら?」


ほら、タオル貸してあげるから。
そう言って手渡されたタオルをありがたく受け取る。


「あれ、なんで僕瞳子姉さんと寝てたんだっけ?」

「貴女が一緒に寝たいって言ったんでしょ?」

「あ、そうだった……」

「そろそろみんなを起こすつもりだから、さっさと準備しちゃいなさい」

「はーい」


外へ出て、顔を洗った後。
タオルを持ってキャラバンの元へ向かうと、瞳子姉さんがホイッスルを咥えて鳴らしている所だった。


「瞳子姉さん、タオルありがと」

「どういたしまして」

「これ、どうしたらいい?」

「あとで貰うわ。そのまま持っててくれないかしら」

「分かった!」

「さ、貴女も準備して」

「はーい」


初め寝ていたテントへ向かい、入ろうとすると春奈が出てきた。
春奈は僕を見た瞬間、がしっと僕の肩を掴んだ。


「どこに行ってたのよ!? 起きたらいないし……はっ、まさかランニング?」

「いや、瞳子姉さんのとこにいた」

「あ、そうなのね。それにしても早起きね〜」

「今日は割と眠った方だよ。自主トレが結構身体にきてたのかなぁ」


雑談を交わしながら僕と春奈はキャラバンに乗り込んだ。
僕はすっかり定位置になった染岡さんの隣に着席する。


「おはようございます、染岡さん」

「おう、おはよう苗字」

「ついに北海道ですね〜」

「……そうだな」


あ、もしかしてあまり話題に出さない方がいいかも……。
そう思っているとキャラバンが動き出した。



***



しばらくキャラバンが走り続けた時だ。


「……うぅっ」


突如襲った寒気。
今どこら辺を走っているんだろ……。もう寒気が襲ってきたって事はもう北海道は近いのかな。


「ねぇ染岡さん。なんか寒くないですか?」

「あ? そうか?」

「春奈、寒くなーい?」

「え? 別に何ともないけど」

「えぇ、本当?」


まさか僕だけ?
でも寒いのなんて耐えられない……。よし。


「壁山ー、僕のバッグとってー」

「えーっと……どれッスか?」

「白いもふもふのキーホルダーが着いてるやつ!」

「あ、これッスかね!」

「そうそれ!」


壁山が手に持ったバッグをこちらに見せる。
うん、僕のバッグだ。


「じゃあ投げて」

「え、でも……」

「大丈夫! ちゃんとキャッチするから!」


へい、パス!
と構えた瞬間だった。


「がッ!!?」

「お・ま・えなぁ!? あぶねーだろーが!!」

「うぅ、痛いぃ……」


僕の頭に落とされた拳骨。
あまりの強烈な痛みに両手で頭を抑える。


「大丈夫か苗字。ほら、バッグ」

「あ゛りがど……」

「相当やられてるな……」

「別に投げなくても回したのに」


土門さんからバッグを受け取って、中身を開く。
一番上に入っていたものを取り出そうとした瞬間だった。


「苗字」

「ヒッ」

「敬語。抜けているぞ」


ギギギ、と首が鳴っていそうな動きで聞こえた声の方を振り向けば、こちらを向いている鬼道さんがいた。
……なんでだろう。ゴーグルで見えないはずなのに、鬼道さんの目が怖く見える。


「今日は厄日だ……」

「あはは……。まだ今日が始まったばかりよ」

「うぅ……助けて下さい、秋ちゃん先輩っ」

「あ、秋ちゃん先輩?」





2021/11/7


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