参戦! 雪原の皇子



結局寝ることが出来なかった僕。
ゲームをしようと思ったけど、音は消さないとダメだし、光やボタンを押す音とかで起こしちゃうかもしれない。
だから頑張って寝ようと思ったけど……ダメだった。

なので一度外に出ることに。


「あれ、苗字」

「? 円堂さん?」


名前を呼ばれた。
円堂さんの声に聞こえたけど、どこにも見当たらない。
もしかして、空耳……


「上、上。キャラバンの上だよ」

「……あ! 円堂さん、土門さん」


キャラバンの上を見ると、そこには円堂さんと土門さんがいた。


「何してるんですか?」

「壁山のイビキがちょっとアレで……。だから土門と星を見てたんだ」

「ふーん……」

「そういうお前は?」

「色々話してたら眠気が覚めちゃって……ゲームでもしてようかなって思ったんだけど、迷惑になっちゃうからこうして外に出てきたんです」

「一緒に星見るか?」

「いえ、少しこの辺歩いたら眠れると思うので、大丈夫です」

「そっか!」

「あんま遠くに行かないようになー」

「はーい」


土門さんの注意に適当に返事し、少し辺りを歩いていた時だ。


「あ、瞳子姉さんだ」

「……! 名前、まだ起きていたの?」

「うん、ちょっと眠れなくて」


瞳子姉さんの背中を見つけ、声を掛けるとこっちに気づいた。
駆け寄ると何か作業をしていたのか、タブレットの電源を落として椅子から立ち上がった。


「……ねぇ瞳子姉さん。みんなは元気?」

「……えぇ」

「僕の事、覚えてるかなぁ」

「覚えているわよ。なんたって、貴女が出ていた試合を見ていたんだから」

「! そ、そうなんだ……」


どの試合を見ていたかは聞けない。
僕にとって忘れたい試合があるのだから。


「さっきね、キャンプしたいって思った時に、みんなとキャンプしに行ったことを思い出したんだ」

「よく覚えているわ」

「……みんなに、会いたいなぁ」


空を見上げると、沢山の星が広がっていた。
周りから聞こえる虫の鳴き声が心地よくて、段々と眠くなってきた。


「眠たいの?」

「う、うん……」

「早く戻りなさい。地べたで寝たくないでしょ?」

「……1回で良いから、また瞳子姉さんと寝たいなぁ。……ダメ?」


眠たかったからなのか、ついそんなことを言ってしまった。
前に怖い夢を見たときに瞳子姉さんと一緒に寝たことがあって、その時のことを思い出してしまったんだ。


「……大きくなっても、その甘えん坊な性格は変わらないのね。いいわよ」

「えへへ、やったぁ」


自分より大きい瞳子姉さんの手が、僕の手を包む。
その温もりはちっとも変わってなかった。





2021/11/7


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