参戦! 光のストライカー


side.鬼道有人



「その前に。貴女、まだおじいさんとおばあさんに伝えていないでしょう? ……それに、ここを離れる事を一番に伝えなきゃいけない人がいるはずよ」

「!」


監督の言葉に嬉しそうだった表情から、悲しそうな表情を浮べる苗字。

一番に伝えなければならない人。
それは苗字にとってサッカーを教えた人物で、家族である人物……彼奴の実の兄、苗字悠だ。

苗字悠は現在稲妻総合病院で入院している。放課後、家についてすぐに兄の病室に向かうほどに苗字は兄の容態を心配している。


「……いいのか?」

「兄さん、前から言ってたんだ。僕のサッカーする姿が見たいって。だから、この話を聞いて兄さんに僕がサッカーしている所を見せたいと思った。……そう覚悟してたんだけどなぁ……」


言葉を紡ぐごとに震える声。
本当は心配でたまらないんだろう。

それでも兄の願いを叶えたくて苗字はサッカーと向き合おうとしている。俺達雷門と共に。


「おじいさんとおばあさんからは電話で良いって話を貰っているわ。後は悠の元に行くだけね」

「え? 僕の荷物は? まさか同じ服をずっと着ろとか……」

「荷物なら預かっているわ。おばあさんにはバレバレだったみたいよ」

「……ばあちゃん」


少しだけ頬を染め、目を逸らす苗字。
どうやら最初からキャラバンに参加する気満々だったらしい。


「……分かった。兄さんに会いに行く」

「ええ。私も行くわ」

「じゃ、じゃあ! 俺もいいですか、監督!」


苗字と監督の間に割って入ったのは円堂だ。
なぜ名乗り出たのだろうか?


「俺、苗字のお兄さんのこと苗字から聞いてたから、色々気になって……。それにキャプテンだし、挨拶しておこっかなーって……」


お前はどのポジションで言っているんだ……?
少々ツッコみたくなるのを抑えて、苗字の方を見た。


「だそうよ、名前」

「……いいよ。兄さんも円堂さんのこと、気になってるって前に言ってたし」

「ほんとか!? やった!」


苗字から許可が下り、円堂も病室へ向かう事になった。

話も纏まったことで、早速稲妻総合病院へキャラバンが走った。
……のだが。


「なんでお前が隣なんだよ!!」

「だってここしか空いてないんだもん」


何、不満なの?と染岡に突っかかる苗字。
大不満だ!!と大声で怒鳴る染岡。
……分かってはいたが、相性最悪である。あいつも分かっているのになぜ隣に座ったんだ……。
俺の予想では、春奈と仲良く座るものだと思ったんだが……。


「……何とかならないのか?鬼道」

「無茶を言うな」


小声で俺にヘルプを出す塔子にそう返して、俺は目を閉じた。
……結局病院に着くまで2人は言い合いを続けていて、キャラバンの中は微妙な雰囲気だった。





2021/09/17


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