参戦! 光のストライカー



「ボールはどうする?」

「雷門にあげるよ」


円堂さんの問いに僕はそう答えた。
特に何も考えずに答えたんだけど……


「テメェ、俺達を舐めてんのか!!」


どうやら染岡さんには僕の発言が舐めているように聞こえたらしい。
とりあえず弁解しよう。


「舐めているんじゃない。ハンデだよ」

「この……!」


あれ、厳選ミスった?
視線の先にいる染岡さんが怒った顔でこちらにズカズカと向かってきた。


「落ち着け、染岡」

「鬼道……!」


歩みを止めた染岡さんの肩に鬼道さんの手が乗せられた。
どうやら止めてくれたらしい。
……もしかしたら染岡さんと僕、相性悪いかもなぁ。

そんな事を思っていると、今試合の審判を勤めてくれる古株さんがホイッスルを鳴らそう構えた。
……瞬間。


「とぅーーーーー!!」


自転車のベルが聞こえたと思えば、現れたのはいつしかの実況者の人。
えっと確か……角馬先輩だっけ。


「はぁ、はぁ……間に合いました……!!」

「か、角馬君!?」

「私角馬、”光のストライカー”苗字名前との試合があると聞き、急いで自転車でやって参りました!!」

「どうやってその情報を入手したのかしら……」


雷門夏未の言葉に同感だ。一体何処で聞いたんだろう……。
対する木野さんと春奈は苦笑いである。


「さて、間もなく試合が始まります! おおっと!? なんと苗字は1人で雷門10人を相手にするようです! その表情は自信に満ちあふれています!!」


当たり前だ。自信しかないんだし。
実況の言葉にそんな事を思っていると、漸くホイッスルが鳴り響いた。


「さあて、まずは様子見かな」


フィールドの外でしか見たことの無い彼らの動きがどんなものなのか……同じ土俵に立って見させて貰おう。


「雷門のキックオフで試合開始です……なんと!苗字、1歩も動かない!!」


実況の言葉を耳に入れながらボールを持つ染岡さんを見つめる。
すると、その声を聞いた染岡さんの表情が怒りに変わった。


「何だと!? ふざけやがって!!」


そう叫んだ染岡さんはドリブルでこちらへ真っ直ぐ向かってくる。
僕の横を通り過ぎた染岡さんは必殺技の体勢に入る。


「くらえ!!”ドラゴンクラッシュ”!」


無人のゴールに染岡さんが自身の必殺技を放った。
……人がいないからと余裕ぶってノーマルシュートを打たなかったことは褒めてあげる。


「染岡の”ドラゴンクラッシュ”がゴールにせま…」


だけどさ、考えてご覧よ。
普通試合で簡単にゴールを許す相手なんていないでしょ?


「油断は良くないよ」


急に大人しくなった実況。
ゴールだと思った人達はその未来を覆された事によって思考を停止させていた。


「苗字速い!! あれだけ距離があったと言うのに、一瞬にしてゴール前へ!!そのスピード、まさに光の如し!!」


すぐさまゴール前に戻った僕は、染岡さんが放ったボールを威力を殺しきらない程度に足で受け止めていた。


「スピードは目で捉えられる、威力は弱い。……入ると思って手加減したでしょ」

「……!」


図星なのか、染岡さんの眉がピクッと動いた。
さて、もう少し現実を教えてあげようか。


「カウンター攻撃ってものがあるんだけど……知ってるよね?」


勝てると思うのは油断している証拠。
その隙をつけ込まれた瞬間……終わるよ。

そう伝え終わった後、今までずっと威力を殺さないように受け止めていたボールを蹴り返した。
ゴールに向けてダイレクトなカウンター攻撃さ。


「なんと! 苗字、染岡の”ドラゴンクラッシュ”を打ち返したァ!! 円堂止められるかーッ!?」


僕だけの力じゃゴールへのダイレクトシュートなんてできない。
だけど、誰かの力……つまり、必殺技のような強力なパワーを利用したものならば出来るって訳さ。

さて、日本一のゴールキーパーである円堂さん。
このカウンターシュートを止められるかい?


「止める……! ”マジン・ザ・ハンド”!!」


円堂さんの背後に現れたのは魔神。
”マジン・ザ・ハンド”を繰り出した円堂さんは、僕が打ち返したボールを止めようと食いしばっている。


「くっ……、止めたぞ!!」


押し合いを制したのは円堂さんだ。
何とか止めたって所かな。


「ちぇっ、ダメかー」


ま、これくらいは止めてくれないとね。
だってこれはまだ序の口。確認なんだから。

何の確認かって? ……円堂さん、貴方が僕の必殺シュートを受けるに値するゴールキーパーか見極めるためのさ。





2021/06/21


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