参戦! 光のストライカー



「な、何これ……」


僕の目の前にあるのは、学校“だったもの”。
現在も尚通話中の兄さんから言われた言葉。


学校が破壊された


嘘だと思った。
だけど今目の前に映っている光景が事実だと言っていた。


『名前、カメラをこちらに向けられるかい?』

「うん」


カメラを学校に向け、兄さんに見えるようにゆっくりと辺りを見回す。


「見える?」

『ああ。……窓からも見えてて気になってたんだけど、これは……』


兄さんが言葉を詰まられた。
直接見ていたわけではないけど学校が破壊された事は知っていたようで、この光景を見てかなり堪えているようだ。


「……今からそっちに向かうね」

『ああ』


兄さんの元気のない声を最後に通話を切る。
携帯をポケットに仕舞った後、もう一度学校を振り返ってその場を後にした。



「……名前?」


誰かが僕の名前を呼んでいた事を知らず。


***


「兄さんっ!」

「名前」


慌てて病室に入ると「静かにね」と兄さんが人差し指を口元に当てて僕に注意した。


「兄さん怪我はない!?」

「俺はなんとも無いよ。幸い病院は被害に遭ってないからね」

「そっか、良かった……」


学校があれだけ破壊されていたから、もしかしたら他の施設とかも破壊されていたらと思ったが病院には何も起こっていないらしい。


「それより、今まで何処に行ってたんだい?」

「世宇子スタジアムに。ほら、フットボールフロンティア決勝戦の会場。そこで世宇子中のキャプテンと話してたんだ」

「そう。……そこに宇宙人は来なかったかい?」

「うちゅう、じん?」


兄さんの発言に首を傾げると同時に驚く。
珍しい。
兄さんは宇宙人とかそういう未確認生物の類いは一切信じない人…所謂リアリストだ。
だから兄さんの口から宇宙人というワードが出てきたことに驚いた。


「その反応……知らないようだね」


僕の反応を見て兄さんは病室に設置してあるテレビのリモコンを手に取り、電源ボタンを押した。
電源の入ったテレビが映した最初の画面はニュースで、画面に大きく速報と出ていた。
その内容は『中学校連続破壊事件』と表示されていた。


「今映っているものは全部学校“だったもの”だ。雷門と世宇子が決勝戦を行っている間に全国で起こっていたんだ」

「じゃあ本当に宇宙人が……?」

「分からない。だけど、雷門中が破壊されたのは事実だ。……お前も見ただろ」


病院に来る途中にみた雷門中。
元の形が分からないほどに破壊されてしまった、僕達の学校。
こんなの、サッカー部のみんなが見たら……!


「雷門、さっき優勝したばっかりなんだよ……?こんなの、酷すぎるよ……!」


今僕がここにいる間にも他の中学校が宇宙人によって破壊されている。
……どうすることもできないのか。


「……名前、面会時間が過ぎた。もう帰りなさい」

「そうだね。……また明日来るよ」

「ありがとう。でも今日こんなことが遭ったばかりだ。危ないと思ったら家からでないように」

「うん。兄さんも気をつけてね。……おやすみなさい」

「ああ、おやすみ。名前」


互いに言葉を交わした後、僕は病室を後にした。
……サッカー部のみんなはもう見たのかな。あんな姿になってしまった学校を。


「……僕に何か出来たらいいのに」


その言葉が後に本当になることを今の僕は分からない。





2021/02/21


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