雷門中サッカー部との出会い
キャプテンさんから現れた輝かしい巨大な手は、いとも簡単に“デスゾーン”を止めた。
「…使えるんじゃん、必殺技」
そう言った時、自分の口が笑みを浮かべていることに気付いた。
驚いて口元に手を当てている間に、ボールは豪炎寺修也の元へ行った。
「あの体勢は…!!」
キャプテンさんからのパスを受け取り、豪炎寺修也はボールを上へと上げた。
あの回転、纏っている炎…間違いない。
「“ファイアトルネード”!」
“ファイアトルネード”
そう呼ばれた必殺シュートは帝国側ゴールへと突き刺さった。
20-1
シュートと共に湧き上がった歓声。
遂に雷門に1点が入ったのだ。
「…やはり、良いシュートだね。“ファイアトルネード”は」
そう言って、グラウンドに背を向けた。
後ろから聞こえるサッカー部の喜ぶ声と、帝国学園の試合放棄の発表の声を聞きながら、校舎へと足を進めた。
「………苗字名前。この程度では動かなかったか」
帝国のキャプテンが僕の背中を見てそう呟いていた事を、僕は知らない。
***
「…おめでとう、雷門」
荷物を持って校舎から出ると、未だにグラウンドにはサッカー部がいた。
未だに勝利の余韻に浸っているのだろう。
先程言い忘れていた祝いの言葉を、聞こえないであろう彼らに掛けてその場を去る。
「………あーあ、僕もサッカーしたくなっちゃったな〜もう」
やはり試合を見るのは良くなかったかも知れない。
あの日、強く心に決めた事を破りそうになったのだから。
「……独りでするサッカーは、やっぱり楽しくないや」
心の奥で押さえつけていた欲望を、ポツリと吐き出した。
校門を抜けて、自分の住んでいる家へと足を進めた。
雷門中サッカー部との出会い END
2020/12/27
prev next
戻る