対 世宇子中
「待ってたわよ」
「……え?」
控え室に足を運ぶと、僕を視界に入れて早々そう言葉を放ったのは雷門夏未だ。
「まさか、僕が此処に来ること分かって言ったの?」
「貴女なら来るんじゃないかと思って」
「……」
何も言い返せない……。
「そろそろ会場から出るから、貴女も一緒にどう?」
「じゃあ同行させて貰おうかな」
それに、一番おめでとうと言いたい人がまだ出てきてないし。
雷門夏未の隣で、出てくる選手達をマネージャー陣と共に待つ。
「……貴女は世宇子中の人達があれほどの強さを持っているか、疑問に思ったかしら?」
「勿論。……無名だった世宇子中が、あれほどの実力がありながらも何故1つも噂されなかったのか、ずっと気になってたよ」
まあ雷門も急に実力を付けてきた、という点では世宇子中と同じだ。
しかし、彼らはきちんと予選から勝ち抜いて本戦へと踏み入れた。
それに比べ世宇子中は、招待推薦校というもので急にサッカー界へ現れた。恐らく本戦試合はやっていないんだろう。実況者が知らない、という時点でその可能性が高い。
「貴女には教えておこうと思う。……世宇子中の強さは、『神のアクア』と呼ばれるものが関係していたの」
「……それって、ドーピングって事じゃ…!?」
「ええ」
雷門夏未が言うには、その『神のアクア』と呼ばれるものは、体力増強ドリンクであり完全な反則行為だった。
そして、それを生み出したのは影山零冶だという。
前半戦の途中で飲んでいたもの。あれが神のアクアらしい。
「まあでも、反則行為を犯していた世宇子中に勝った雷門は、勝利と共に、神のアクアの存在を否定した事にもなる。……一度に二つの事を成し遂げたって事か」
「ふふっ、褒め言葉かしら」
「ああ、褒め言葉だよ」
雷門夏未と会話をしていると、更衣室の扉が開いた。
そして、一番に目が合ったのが……
「あ!苗字!!」
「やあ、円堂さん」
雷門イレブンのキャプテンである円堂守だ。
僕を視界にいれた円堂さんは、僕を指さして驚いていた。
後ろからは、他のメンバーがこちらを覗いていた。
2021/02/21
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