対 世宇子中
「大丈夫か?苗字」
「……う、うん。…って!それ僕のセリフ!」
円堂さんの言葉に、僕ははっ、としてそう言い返す。
自分が此処に来た理由は円堂さんが危なかったからで、僕は心配される為に来たわけじゃない。
「あんな足ガクガクの状態で良くもう一発って言えたね!?僕が来なかったら、怪我してたかも知れないのに!」
「あっははは……。わりぃわりぃ」
円堂さんの顔に指を指し、腰に手を当てながら説教するも当の本人は自分の後頭部に手を当てて笑ってる。
その様子に溜息をついて、僕は腕を組んで円堂さんを見つめる。
「しかし、まさか苗字が女だったとは……」
「悪かった!!俺、苗字の事かんっっぜんに男だと思ってた!!」
「あー、そのことは別に良いよ。慣れてるし」
風丸さんと円堂さんの言葉に、気にしてない、と答えた。
言われすぎて慣れちゃったし。
「苗字。手を出せ」
「え?なんで……って、ちょっと!?」
鬼道さんが無理矢理僕の手を引っ張る。
そして横にいた豪炎寺さんがハンカチで僕の手の甲をゴシゴシと拭いていた。
……あ、この手はさっき世宇子中のキャプテンが……。思い出したら、顔が熱くなった。
「……てか、いつの間に用意を?」
「急いで用意した」
「は?」
「大丈夫だ。ちゃんと消毒液も付けた」
「何故!?」
豪炎寺さんのキラキラしたエフェクトがついてそうな表情(無表情ではあるが)を見て、そうツッコんでしまった。
「名前!!怪我してない!?」
救急箱片手に春奈が近寄ってきた。
「何処をどうみたら怪我してるのさ」
「あんなすごいシュートを片足で止めてたから……」
「なんとも無いよ。それに、あのシュートはまだ本気じゃないよ」
春奈にそう言い、先程まであの世宇子中のキャプテンがいた所を見つめる。
そう。あのシュートは本気じゃない。
それに、この目で見たんだ。……僕の必殺技に似ている、あのシュートを。
「……結局、吐かなかったな」
「?何が、だ?」
「あの世宇子中のキャプテン、僕の使う必殺技に似た必殺技を使うんだよ。……それがどうしても気になって」
風丸さんが僕の呟きに反応する。
「……確かに、お前の使う必殺技に似ていたな」
「似すぎて、頭が痛くなってくるよ……」
鬼道さんにそう返して、手を頭に当てる。
先程言われた言葉が頭の中で反響して、頭痛が増した気がする。
「でも、さっきのボールで、新しい技が見えた気がする。やれるよ、俺達」
円堂さんの言葉が耳に入る。
僕は円堂さんの方へ首を動かす。
「バカな事言わないでくれる?」
本当、何を言っているの?
「なんだよ苗字」
「本当の事を言っただけ」
腕を組んで、豪炎寺さんと鬼道さんの間にいる円堂さんにそう言った。
「苗字の言う通りだ。____今のお前達には絶対不可能だ」
その声が隣から聞こえた。
横を見ると……
「雷雷軒のおっさん……」
「響木だ」
「……響木さん」
隣には、雷雷軒で見る格好の響木さんがいた。
2021/02/21
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