対 世宇子中



「うぅ……。とりあえずこれで良いだろ……!」


現在、時刻は放課後
そして、未だに学校にいる僕

何故僕がまだ学校にいるのかと言うと、課題の存在を忘れており、春奈に言われて思い出し、朝の提出には間に合わないので放課後に出す、と教師に言ったのだ。
急いで問題を解いて、教師に提出し許しを得た所で教室に戻る。


「……おぉ、今日の練習は学校なんだ」


ふと外を見ると、今日グラウンドを使っているのはサッカー部のようだ。
まあ次決勝だもんね。優先順位は高いでしょ。


「……あんなに弱かったのに、遂に決勝か。しかし……」


ゴール前に立つある人を見る。
サッカー部でゴール前に立つのは一人しかいない。円堂さんだ。

春奈から聞いた話。
円堂さんは前回の対戦相手である木戸川清修の3TOP……あの三つ子兄弟のシュートの影響で、新たな必殺技に挑戦しているらしい。
あの様子だと結構焦っているな。


「ま、ほとんどの人にとっては初の決勝戦だしね。焦っているのも頷ける。……さあて、アドバイスでもしてあげようかな」


1人の教室でそう言うと、自分の声が良く聞こえる。
荷物を持って、教室を出る。
靴箱に来てから、第一ボタンを外してリボンを解く。
首元が楽になったところで、靴を取り出して床に放る。あ、片方だけ変な方向向いた。


「……? 何か揉めてる?」


靴の先をトントン、としながら耳から聞こえる声に反応する。
円堂さんの声も聞こえる。
急いで外に出ると、


「!あの人は……!!」


あの日、帝国学園との試合で見た、僕の必殺技に似た必殺技を使う、世宇子中のキャプテンがいた。
そして、ゴールの近くに人が集まっており、その中心にいたのは、鬼道さんに抱えられた円堂さんだった。


「来いよ、もう一発!!今の本気じゃないだろ……っ、本気でどん、と来いよ!!」


聞いたことのない円堂さんの怒りの籠もった声が耳に入る。
円堂さんの様子に、周りにいた人達は離れていく。


「……!」


世宇子中のキャプテンは、持っていたボールをあげて、高く飛び上がった。
何をする気なのか、嫌でも分かってしまった。
あの日、帝国学園の選手達のような目に円堂さんを遭わせる気なのか……!?


「危ない……ッ!!」


荷物を放り、グラウンドに向かって走る。
今の自分の格好など気にせず、円堂さんと迫り来るボールの間に向かって走った。





2021/02/21


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