対 木戸川清修中
「あ、鬼瓦のおっさんだ!」
「おう、嬢ちゃんか。……そろそろ普通に呼んでくれないかねェ……」
お手洗いから観客席に戻る途中、見覚えのある人を発見。鬼瓦のおっさんだ。
向こうも僕に気付き、手を上げてくれた。
座っていた所へは戻らず、鬼瓦のおっさんの隣で試合を見ることにした。
後半戦開始のホイッスルが鳴り響く。
両チームとも、このまま同点で終わる訳にはいかない。
それに、あの三兄弟はあの技をまだ使っていない。___“トライアングルZ”を。
「!……後半戦開始早々、使ってきたか」
三兄弟の必殺技“トライアングルZ”が雷門中ゴールへ向かっていく。
円堂さんは“ゴッドハンド”で立ち向かうも……
「!“ゴッドハンド”を破るか……」
“ゴッドハンド”を破り木戸川清修に点数が入った。
1-2
木戸川清修が後半戦開始早々一点を奪った。
「“ゴッドハンド”を破るなんてな……」
「あの技、結構強いみたいだからね。まあ、僕は打ち返したけど」
鬼瓦のおっさんの言葉にそう返すと同時にホイッスルが鳴った。
……ふむふむ。まずは“トライアングルZ”を防ぐため、三兄弟をチェックしたか。
ピンクの七三分けが、紫色のリーゼントにボールを出した。
そこを鬼道さんがスライディングでボールを奪おうとしたが、ボールは雷門中ゴールへ。
しかし、円堂さんの正面。がっちりと止めた。
ボールを前線に投げ、円堂さんは前線に出た。
……だけど、一度やったことが二度も通じるだろうか。
「……ブロックされた、か」
木戸川清修のDFが三人の動きを封じた。ボールは外へと出ていった。
「“ゴッドハンド”も防がれ、あの三人技も打たせて貰えない……。大丈夫かな……」
「大丈夫さ。雷門は勝つ。今までピンチを乗り越えてきたんだから」
フィールドでは、“ドラゴントルネード”を放った所だった。
だが、木戸川清修のGKの必殺技により止められる。
「……おぉ」
そのボールは大きく上がっていた。
ボールに向かって行くひとつの炎。……豪炎寺さんだ。
「……今の攻撃良いな。参考にしよ」
2-2
再び同点になった。
両校攻めて守っての譲らない戦いが続く。
「このままだと、延長か、雷門の準決勝敗退かな……」
「?なんでだ?」
「だって、あの三兄弟の必殺技止められないんだよ?……雷門が不利だよ」
鬼瓦のおっさんの言葉にそう返しているうちに、あの三兄弟へボールが渡った。……・くる、“トライアングルZ”が…っ。
「……っ、やっぱり……」
三兄弟の“トライアングルZ”に、円堂さんは“ゴッドハンド”で迎えうつ。
しかし、どう見ても押されている。
雷門は此処で準決勝敗た……
「いや、そうでもないみたいだぜ?」
「え?」
下げていた顔を上げ、フィールドを見る。
僕の視界に入ったのは、円堂さんの背中を壁山と栗松が支えて一緒にシュートを止めようとしている光景だった。
「……やった!」
三人の力で見事、“トライアングルZ”を止めたのだ。
思わず鬼瓦のおっさんに飛びついて、掴んだ腕を揺さぶる。
「落ち着け嬢ちゃんっ」
「あ、ごめんなさい」
興奮の余り鬼瓦のおっさんに飛びついたことに謝罪し、フィールドに視界を移す。
「さあ、後は点を取るだけだ……!」
「うん…!」
ボールは円堂さんから豪炎寺さんへ。……豪炎寺さんがフリーだ。
それを見て、雷門中ゴール前にいた三兄弟は、その背中を追う。
三兄弟は豪炎寺さんを追い抜き、三人係で止める。
しかし、豪炎寺さんは後ろへとボールを蹴った。……バックパスだ。
ボールはあの名前の知らない人へと渡った。
そして、円堂さんと土門さんが上がってくる。……あの、ペガサスの技だろうか。
しかし、前には先程その必殺技発動を防いだDFが。
「……炎」
DFの必殺技を突破して、三人が交差する。
そして交差した事で発生したパワーが、炎に変わる。
それはまるで、“不死鳥”のようで。
「……はいった」
鳴り響くホイッスル。
3-2
雷門中が逆転したのだ。
そして、次に鳴り響いたホイッスルは、試合終了のホイッスル。
……雷門中は、決勝戦出場への切符を勝ち取ったのだ。
「燃えるねェ!!」
「やったぁ!決勝戦進出だーっ!」
「随分と嬉しそうだな」
「え?………んん゛っ、ま、まあ勝って当然だよね?」
「嬉しいくせに、隠すのが下手ずぎるぜ嬢ちゃん」
「……」
鬼瓦のおっさんの言葉に何も言えなくなった。
「帰るのか?」
「うん」
「会っていけば良いのに」
「彼らには、ある『約束』をしてるからさ」
「約束?」
鬼瓦のおっさんが不思議そうにそう言った。
「優勝したら、あのサッカー部に入るっていう『約束』」
「随分と上からな約束だな」
「だって僕、彼らより強いからさ」
鬼瓦のおっさんにそう言って、試合会場を後にした。
2021/02/21
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