対 木戸川清修中



「……ない」


急にお菓子が食べたくなったので、お菓子が入っている棚を覗くと空っぽだった。
あまりお菓子を食べる人ではないが、常にお菓子を食べないからこそ急に食べたくなる時がある。


「久しぶりにお菓子が食べたいなぁ……。あ、そうだ!商店街に行こう!」


何処かのキャッチコピーのような言葉を言い、財布を手に取る。
引っ越してきた時に知ったあの駄菓子屋に行こう。


「ばあちゃーん!商店街に行ってくるねー!」

「はいはい。暗くなる前に帰ってくるんだよ」

「はーい!」


ばあちゃんに商店街に行くことを伝えて家を出る。
稲妻町は、僕が前に住んでいた場所のような雰囲気があるので結構好きだ。
よく都会っ子に間違われるが、僕はどちらかというと自然を一緒に生活してきた田舎っ子に分類されると思う。まあ、すごい田舎って感じの場所ではなかったけど。


「おや。いらっしゃい」

「こんにちはー」


駄菓子屋に入店し、おばあちゃんに挨拶して商品を見回る。


「うわ〜、懐かしいお菓子がいっぱいある〜!う〜ん、どれにしようかな〜?」


財布の中身と相談しながら買うお菓子を選ぶ。
グミもいいなぁ。あ、でもこのスナック菓子もいい。
キョロキョロと商品を見ていた時だ。


「あれ?苗字?」


後ろから名前を呼ばれたので、声がした方へと振り返る。


「あ、円堂さん。……それに、豪炎寺さんと鬼道さんも」


駄菓子屋の入り口には、僕の名前を呼んだ円堂さん。その後ろには豪炎寺さんと鬼道さんがいた。…なんでこんなにもエンカウント率が高いのだろう……。
そう思いながらおばあちゃんに商品を持っていき、支払いを済ませる。
駄菓子屋を出てすぐに設置されているベンチに座り、袋の中からグミを取り出す。


「練習終わり?」

「ああ」


隣に座ってきた鬼道さんにスペースを空けながら尋ねると、そう声が返ってきた。


「円堂が連れてきてくれてな。初めて来たよ」

「まあ、二人がここにくるイメージないな」

「苗字はよく来るのか?」

「まあね」


鬼道さんの言葉に適当に返して、口の中にグミを放る。
うん、良い歯ごたえ。


「さっきから何を食べているんだ?」

「グミ」

「へぇ、面白い形をしているな」


隣に設置されている自動販売機で飲み物を購入した豪炎寺さんが、缶の蓋を開けながら僕の持っているグミを見る。
折角なので二人に一つあげた。
もう片方の隣に豪炎寺さんが座り、見事に僕はサンドイッチ状態になった。……やはり男子だからか、女子の僕とは体格が違うので二人が両サイドに座っていると、ちょっと狭い気がする。


「しかし、駄菓子屋か……。子供みたいだな」

「え?」

「純粋で、まっすぐで……。だから『サッカーバカ』になれるかも知れないな」

「ああ」


鬼道さんと豪炎寺さんの会話内容は、円堂さんだろう。
二人は円堂さんを貶している訳ではない。褒めている……と、思う。
……僕抜きで会話するなら、僕を間に挟まないでよ。


「どけよ!」

「あ!割り込みはいけないんだよ!!」

「お前等!順番守れよな!」


店内からそんな会話が聞こえ、僕達は駄菓子屋の方へ視線を向ける。


「いーけないんだ、いけないんだ!!」

「うっせェ!」

「あんた達!ちゃんと並びなさい!」


僕達は駄菓子屋の出入り口へ向かう。
そこにいたのは、駄菓子屋のおばあちゃんと、僕より先に来ていた小さい子達と円堂さん。
そして、揉め事の根源であろう三人の男がいた。





2021/02/21


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