強さ比べ

side.碧色



『出番だよ、兄さん』


名前に呼ばれ、意識が覚醒する。
それと同時に眠っている間に作った姿へと変わっていく。


「おぉ、生きてる時みたいな格好になってる。結構上手くいったな」


大分前にまさっちに言ったことをここで実現して見せたぞ!やったね!
流石に妹の身体のままなのは色々と堪える。まず女体である事だろ?それと大好きな妹の身体である事、いくらトリオン体であるとは言え傷つけたくない……ダメだ、考えたら沢山出てきそう。


「しっかし、呼ばれた瞬間にお出ましかよ」


俺の周りを囲むように四方八方存在する近界民ネイバーブラックトリガーおれの為にとまさっちが特別に作ってくれた通信機が右耳に着いている。そこからまさっちが妹の名前を呼ぶ声が聞こえる。


「安心しろ、無事だから」


そもそも、俺がそんな目に遭わせるかよ。
届かない言葉をまさっちに向けて口にした瞬間、一斉に飛びついてきた近界民ネイバー。……ははっ、そんなんで俺がやられるとでも?


「……甘いなァ」


響く爆発音。……俺を中心に黒雷を発生させた。その威力に近界民ネイバーは吹き飛んでいった。


「……んー、全部死んだかな」


一番近くに飛ばされていた近界民ネイバーを見てみると、身体のほとんどがなくなっていた。
しかし視界が悪い。まあ俺が纏めて吹っ飛ばしたからなんだけどさ。


『大丈夫か!?名前』

「問題ありません」


まさっち〜。俺がこんなんでやられるとでも思ってるのか?まあ、生前の俺だったらもしかしたら死んでたかもな。でもブラックトリガーとなった俺ならまとめて襲いかかってきても問題ない。

やっとの事で砂埃が晴れ、視界が良くなる。そしてまたもや近界民ネイバーのご登場だ。
……そうだ、眠っている間に見つけてしまった“あるもの”を試せるチャンスだ。

あるもの。それは生前俺が持っていた副作用サイドエフェクトだ。
俺の副作用サイドエフェクトは『トリオン強化』。その名の通り自身のトリオン能力を強化する事ができる。そうだな、発動中は攻撃力が上がるって感じだな。


「……さあおいで。お前等が欲しいのはトリオンおれだろ?」


この副作用サイドエフェクトは使用中トリオン能力の効果を上げるため、トリオン兵を引きつけやすいのだ。これがデメリットだったりするんだけど、俺にとってはデメリットでも何でもないんだよなぁ。
トリオン兵は所詮プログラムされた存在。だから簡単に倒せる。


「はは……っ、あっはははは!!!」


俺という餌に釣られたトリオン兵がどんどん集まってくる。こちらへ向かってくる近界民ネイバーを生成したブレードで全て倒していく。


「何これ、すっげぇ楽しい……!もっと俺と遊んでくれよ、近界民ネイバー!!」


***


(忍田)


ボーダー本部基地、モニター室にて


「あの姿は……!!」


砂埃が晴れたと思えば、そこにいたのは懐かしい後ろ姿……香薫だった。
まさか、あの時言っていた姿を変えるというものに成功したというのか……?


「忍田本部長!一体どういう事です?!」

「あの場所にいたのは間違いなく苗字隊員だった。……しかし、あれは少し別人の様に見えますが?」


そう。
あの姿はこのボーダーが世間に公表されていなかった時代…所謂旧ボーダー時代の時、香薫が設定していたトリオン体の姿だ。まさかここまで再現してしまうとは……!
鬼怒田さんと根付さんにどう説明したら……。


「……香薫」


後ろで城戸さんが亡き少年の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。





2021/03/02


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