強さ比べ
side.緋色
迅さんとの約束の日、当日
迅さんの予想通り、目の前には大量の近界民が現れた。まあトリオン兵だけど。
その数、私の副作用で数えた所……視覚強化した範囲でざっと20体。
「これ、本当に私達二人だけでいいんですか?」
『うん〜。今日の防衛任務はおれと名前ちゃんしか入ってないから邪魔は入らないし』
「民間人の被害は大丈夫なんです?」
『大丈夫大丈夫。おれの副作用でばっちり確認できてるし』
トリオン体の標準機能である内部通話で迅さんと会話をしているのだが、本当に大丈夫なんだろうか……。まあ、迅さんは民間人に被害を遭わせるような人ではないし、大丈夫だろう。
そうそう、何故私がこうしてブラックトリガーを使用してまでトリオン兵を討伐するのかというと、実際に近界民が襲撃してきたという場合に、私のブラックトリガーや迅さんのブラックトリガーがどれだけ使えるかを確かめる為だと言う。
確かに、訓練で使っている仮想近界民はいくら本物のようにプログラムされているとはいえ、練習である事に変わりはない。こうして本物の近界民相手にどれだけ使えるのかはまだ一度もないのだ。私はだけど。だから忍田さんも渋々了承したのだろう。
と言うわけでこの防衛任務は上層部の人も見ているのだ。……ただの防衛任務に何故視聴者がいるんだろう……。まあ、使っているのがお互いブラックトリガーだからだろうけどさ。
『名前ちゃん、用意はいい?』
「いつでも」
私の視界にも何体かトリオン兵がいる。……気付かれるのは時間の問題だ。
『それでは、戦闘開始』
沢村さんの声が聞こえた。
ノーマルトリガーの換装を解き、私はそっと左耳に手を当てる。
周りにいるのはトリオン兵のみ。迅さんは少し離れた場所にいるから人は0。副作用で確認もした。
……ちょっと面倒な事になってるけど、兄さんならこのトリオン兵楽勝だよ。心配なのは私の意識がなくなった後何だけど…まあ、忍田さんが何とかしてくれるよね。
「……出番だよ、兄さん」
ブラックトリガー起動の意思表示をする。
その瞬間、私の意識は真っ暗になった。
2021/03/02
prev next
戻る