殺し屋レオン:序




事情聴取を受けるため、E組の子供達と同じヘリに乗り彼らが宿泊しているホテルへ着いた。
彼らはヘリが着いた途端、一斉に駆け出して倒れている子等に向かって行った。


「……これで依頼は完了だな」


先に防衛省の人間に連絡すると言った手もあった。
しかし今回、烏間殿が僕の裏切りを疑ったのと同じで、僕もいくら依頼人だからとはいえ完全に信用しているわけじゃない。

……そもそも、国の人間を信頼するってのが無理な話なんだよね。これは個人的な話になるけど。


遠くから彼らの泣き声、笑い声といった喜びの声が聞こえる。
僕は向こうで喜びを共有できる立場ではないため、防衛省の人間等が様々な準備をしている間暇なのだ。

折角リゾートと呼べる場所に来たんだ。海でも見ていよう。
そう思い場所を移動した時だった。


「何処に行くの?」


後ろから掛けられた声。……カルマの声だ。


「何処にって、海を見にいくだけだ」

「俺も行って良い?」

「君が行くべき場所は向こうだろ」


そう言ってE組の子供達が集まっている場所を指指す。しかしカルマはその場から動こうとしない。


「俺言ったでしょ?名前とリゾート楽しみたいって」

「……」

「今からでもいいからさ、俺に時間頂戴?」


カルマからは偽りの感情は感じられない。
……どうも本当に僕とこのリゾートを楽しみたいと思っているようだ。


「苗字さん、もう少し待たせてしまうんだが……」

「構わないよ。明日の夕方までに解放してくれればそれで」

「そうか。しかしあまり遠くに行かれても困る。目の届く場所なら何処へ行っても構わない」

「なら俺が監視するよ」

「じゃあ赤羽君。苗字さんの監視を宜しく頼む」


そう言って烏間殿は忙しそうに走り去ってしまった。大変だなぁ、何だっけ?完全防御形態っていう状態のターゲットをどうするかだっけ?

何で知っているのかって?聞こえたからだけど?僕、耳いいからさ。
常に感覚を研ぎ澄ませているんだよ。耳から得られる情報、鼻から得られる情報、皮膚から得られる情報……五感はそれぞれ適した状況の中で必要なものだ。

今回は聞く意味はほぼ皆無だ。自然と耳に入っちゃっただけである。


「じゃあ烏間先生から了承して貰えた事だし……デートしよっか、名前」

「デート、ねぇ……。君、男でもいける口か」

「やだなぁ。名前だからだよ」


今は男の姿で変装しており、身長を5p盛っている。どうやって盛ってるのかって?厚底の靴履いてるんだよ。
これ以上上げる事も可能だが、上げる度にバランスは取りづらくなり、自然な動作を見せる事が難しくなる。なので5pが一番安定しているのだ。

……男にしては身長が低くないかって?うるさいな、人間は個人差というものがあってだな。そもそも男は背が高い、女は背が低いイメージを固めているのはおかしいぞ。人それぞれなんだから、背の低い男も背の高い女もいるだろ。


「今回の事で、更に名前が好きになった」

「それはどうも」

「冷たいなぁ〜」


潮風が吹き、砂浜に座り込んでいる僕とカルマの髪を靡く。
夜の海も悪くない。それに、今日は天気が良い。夜空に三日月がはっきりと見える。


「お前は寝なくて良いのか?」

「うん?名前といられるなら寝なくても…」

「嘘がバレバレだ。お前、グリップとやり合ったんだろ?プロと一対一で…しかも素手を武器にした近接型の殺し屋だ。身体が疲労を感じてない方が可笑しい」


カルマを見ると、顔に疲れを感じていると書いてあるような表情をしていた。上手く隠していたようだが、僕は騙せないぞ。


「なーんだ。……バレてた」

「この僕に隠そうとした事は褒めてやろう。……ここで風邪を引きたくないならさっさと部屋に戻れ。175pの男を運びたくは無い」

「じゃあ一緒に寝ようよ。名前も疲れてるでしょ?」

「僕はこの後、事情聴取だ」


めんどくさいな……。
眠いなら僕なんかほっといてさっさと寝ればいいのに。

それに、僕は数日くらい寝なくたっても平気だ。何時間も標的ターゲットを張り込んで殺す隙を狙うことだってあるんだし。


「……おい、此処で寝るなら置いてくぞ」

「やだぁ〜」


肩に掛かる重み。……カルマの顔が僕の肩にもたれかかっているようだ。やっぱり疲れているじゃないか。
お願いだから僕にもたれかからないでくれ。重い。


「はぁ……支えるくらいはしてやるから歩け」

「ん〜」


なんとかカルマの部屋まで運び混み、ベッドに放る。半分寝ていたカルマを運ぶのは大変だった……。


「……本当に疲れたんだな」


静かな廊下を歩いていると、偶にいびきが聞こえてくる。確かいびきをかく原因は疲れだって聞いた事があるな……。
ま、詳しい原因は知らないけど。興味ないし。


「レオン。準備が整いましたので、事情聴取を始めさせていただきます」

「了解」


さて、今日はオールナイトだな。
呼びに来た女性の防衛省の人間の背中を追って僕はその場から去った。





2021/04/03


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