変幻自在な殺し屋、現る



「気になるのは仕方ないね。だって僕、顔良いし」

「自覚しているタイプか……」

「この顔を使って変装しているんだから、自覚していない方が変だろ?」


僕の暗殺スタイルは自分の『中性的な容姿』と『声帯模写』を使った『変装』なんだから。
自信は全て行動に表れる。持っていなかったらこんなスタイルにしてないって。
いやあ、顔だけで性別の判断ができないって誰に言われても嬉しいね〜。


「そんなに気になるなら……分かった。脱いであげるよ」

「「「脱ぐ!!?」」」


騒がしい声を無視して着用しているマント手を伸ばす。



「たーんと見たまえ! 僕の美ボディを!!」


バサリ、と音を立ててながらマントを上へ放り投げた。
ゆっくり落ちてくるマントをあげたままだった手でキャッチし、腕に掛ける。


「ま、服装で分かるか」

「ぬ、脱ぐってマントの事か……」

「よっしゃあああああ!!」


着用しているのはセーターにネクタイ、スカート。つまり女子制服だ。
雄叫びを上げる岡島大河。……ふん、わかりやすい。
別に服を脱いでも構わないけどね。あ、日本人って確か恥ずかしがり屋なんだっけ?あと僕ぐらいの年齢は思春期って奴に入ってる人が多いんだっけ。
僕に思春期はいつ来るのかな〜。ま、来たとしても日常に何の影響もないだろうけど。


「言っておくけど、女子の制服を着ているからって“女”だと認識しないでね」

「なんで?」

「僕、性別不明で通ってるから」


僕は服装や髪型、メイクで印象が変わりやすい容姿をしている。
身長も女性では高い方だし、男性では……まあ、この顔でならこのくらいの身長は妥協してくれるでしょ。まだ成人してる訳じゃないし。
……あれ、潮田渚がいる方向から嫉妬に近い痛々しい視線を感じる……。


「スタイル抜群……」

「イリーナ程ではないけど、僕もハニートラップを使うからね。見た目には気を使うよ。えーっと、君は……」


『矢田桃花』だっけ?
彼女にそう問えば、どうして知ってるの?と言いたげな視線で僕を見る。


「君も良い身体してると思うけどね〜」

「「「おっさんか!!」」」


誰がおっさんだよ。褒めただけじゃないか。
ムスッとしていると、教室の奥から声を掛けられた。


「前から思ってたんだけどー、どうして自己紹介もしてないのに俺達の名前知ってるの?」



聞き覚えのある声。……あぁ、赤羽業か。
矢田桃花から視線を彼に向ける。僕は優しいから質問に答えてあげよう。


「愚問だね。調べたからに決まってるだろう?」

「へぇ……どうやって?」

「方法はいくらでもある。別に君達に害のあるような方法で調べた訳じゃないから安心して良い」

「信用できないんだけど?」

「……はぁ。自己紹介されるのが面倒だからさ」


転入生である僕はこのように紹介されるから、彼らはこちらより先に僕と言う人間を一方的に認識する。しかし僕はその逆で君達の事は何も知らない……。
いちいち自己紹介されるのは時間の無駄だ。だから学内のネットワークに侵入して生徒データを見させて貰った。大丈夫、ウイルスなんてながしてないよ。

それに、一年ほどの付き合いなんだ。
変に懐かれても困るし。ま、信頼はさせるけどね。


「ところでさ〜。ずっと黙ってるけど何か一言ないわけ? ……ターゲット?」


イリーナの隣でジッと僕を見て固まっているこのクラスの担任……ターゲットを見る。
貰った資料に着いていた写真と表情はあまり変わらないはずなのに、僕にはターゲットの表情が「驚き」を写しだしているような気がした。





2021/01/16


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