変幻自在な殺し屋、現る

side.×



誰もが声が聞こえた上を……天井を見上げる。
そして、言葉を失った。
___そこにいた人物は浮いていた・・・・・のだから。



「ま、流石にしょっちゅう天井を見てる奴はいないか」


ニコリと笑みを見せたレオン。
……そう、天井にいるため現在教室にいる生徒達とはそこまで距離はない。だから今まで見る事のできなかったレオンの表情がはっきりと見えるのだ。


「男子?いや、女子にも見えるな……」

「もしかして男の娘……!」

「まさか渚と同類……!?」

「同類って何!?」


レオンの容姿にいち早く反応したのは『前原 陽人』、2の次元の方向に走った発言をしたのは『竹林 孝太郎』、E組クラスにいる見た目が女子にしか見えない男子生徒と同じ存在なのでは、と言ったのは『岡野 ひなた』だ。
岡野の言葉にツッコんだのは勿論、彼女の言葉に出てきた名前の本人、潮田である。
竹林の発言にE組は苦笑い、言われた本人レオンは首を傾げている。どうやら意味が分かっていないらしい。


「というより、どうやって天井に浮いてるんだ!?」

「……あぁ、今雲の中だから分からないのか」


現状にやっとツッコんだ磯貝の言葉に答えること無く、レオンは窓を見てボソリと声を出す。
顔は見えているものの、性別の判断材料になるもうひとつ…身体はマントに包まれていて分からない。
それも器用に包んでいるようだ。


「……おっ。答えは実際に見れば分かる」


やっと視線を生徒達の方へ向けたレオン。
それと同時に曇っていて暗かった外から太陽の光が差す。


「あれ、なんか光ってる……?」

「……これは、ワイヤー・・・・ですね」


触手を伸ばして殺せんせーが光るものに触れる。
そう、レオンは透明のワイヤーの上に座っていたのだ。
そのワイヤーはまるで蜘蛛の糸の様に、教室中に広がっていた。


「正解、ターゲット。流石に超能力は持ってないさ」


よっ、と言いながらレオンは教壇に降り立ち、生徒達の方へ振り返る。
降りた動作で、レオンが被っていたマントが脱げた。


「では改めて。今日からここE組に所属する事になりました、殺し屋レオンです。でも、ここでレオンと名乗るわけに行かないので、君達と混ざってもおかしくないよう、こう名乗りましょう」


振り返ったレオンの容姿は、竹林が「男の娘」と呼んでしまっても仕方ない程の容姿……つまり、男と女どちらとも取れる中性的な容姿をしていた。
閉じていた瞼を開かれ、そこから覗いたのは透き通った水色。


「苗字名前。苗字名前と名乗ります。宜しくね、E組の皆さん」


人懐っこい笑みを向けたレオン……苗字名前。
しかし生徒達はその笑みよりも気になる事があった。


「「「(性別は)どっちだよ!!!??」」」

「はぁ?」


生徒達の反応に先程の人懐っこい笑顔はどこへやら、名前は怪訝そうな顔を浮べる。
しかめた顔をしてE組を見ていた名前が、急にドアの方へと首を向ける。
その様子に誰もが首を傾げる。
……と、ドドドドドドドドという音が廊下に響く。そしてバタンッ!と大きな音を立てて教室の扉が開いた。


「やーっぱり、ナマエじゃない!!!」

「げっ、やっぱり!!」

「会いたかったわ〜!!」

「ギャーッ!?」


語尾にハートがついている勢いで名前に飛びついてきたのは、この場で誰よりも名前を知っている……であろう人物、イリーナだった。
どうやら一度教室を退出していたようで、名前がいた事に反応して飛んで来たらしい。


「く、苦し……、イリーナ……」

「あらごめんなさい? 嬉しくてつい抱きついちゃった」


テヘッと笑みを零したイリーナだが、名前は彼女の胸で窒息しかけていた。





2021/01/04


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