ビジョンの時間



「で、イトナに一瞬でも隙を作れば原さんはタコが勝手に助けてくれる」


先程まで女子生徒がいた場所を見れば、彼女が捕まっていた枝…根?まあ、それは折れていた。
生徒達から悲鳴などの声はあがっていない事を見ると、原と呼ばれた生徒……『原 寿美鈴』はターゲットが無事に救出したみたいだね。


「吉田!村松!でけーの頼むぜ!!」


さっきまでの落ち込み焦り顔はどこに行ったんだか。
名を呼ばれた2人の反応からに、あれが通常運転なのかな?寺坂竜馬は。


「殺せんせーと弱点一緒なんだよね?じゃあ、同じ事やり返せばいいわけだ」


赤羽業の指示で次々と飛び込むE組生徒達。
彼らが飛び込む事で飛び散る水は堀部糸成の触手を使い物にならなくさせるのには十分だった。

……シロ。君の作戦は完璧だ。
ターゲットと似た存在の堀部糸成を持つと言う事は、ターゲットと対等にやり合える存在ではある事は間違いない。
だけどね、君が見せる作戦は堀部糸成にも通ずると言う事にそろそろ気付いたら?
これ、同じミスなんじゃないの?

前は盗聴して状況を判断していたから今回は直接見れるからどうやるのかな、って思ってたんだけど……。また同じだね。


「だいぶ吸っちゃったねぇ。あんたらのハンデが少なくなった。……で、どーすんの?俺等も賞金もってかれんの嫌だし、そもそもみんなあんたの作戦で死にかけてるし。ついでに寺坂もボコられてるし。まだ続けるなら、こっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」


……やられたな、シロ。
これは赤羽業の頭脳の勝ちだ。
頭の回る奴だ、面倒な目に遭わない様に扱いを考えないと。


「……帰るよ、イトナ」


どうやら撤退するらしい。
だけど……君の生徒はまだ殺る気みたいだよ?


「どうです?みんなで楽しそうな学級でしょう。そろそろちゃんとクラスに来ませんか?」

「イトナ」

「〜っ!!!」


……あれ、堀部糸成の奴なんか怒ってない?
これまた前回の様に暴走するんじゃ……。


「……」

「……はぁ」


シロと視線が合う。
なんだ、僕がいたの最初から分かってたのか。

ハイハイ、分かったよ。
カチャッと僕が握る“物”が音を鳴らす。


「自分の世界に入った人間をこちらへ引き戻すには、ほどよく物音を立てる事だ」


___パンッと銃声が鳴り響く。
お陰で視線が一気に集まった。


「おかえり、堀部糸成」

「…っ」


静まり返った空間に僕の声が響く。
僕と見つめ合っていた堀部糸成は、シロの近くへ飛んだ。
そして今度はシロと目が合う。……来いってか?


「先に行け。後で追いつく」


銃口にフッと息を吹きかけ、シロに伝える。
伝わったのか、シロと堀部糸成は森の奥へ消えた。
どうせ落ち合う場所は決まっている。後でその場所へ向かおう。いなかったらいなかったで帰ればいい。


「さてと」


ずーっと痛い視線を向けられる僕の気持ちになってくれないかな?E組諸君。
……今のターゲットは弱っている。殺れる確率はかなり高い。
でも、弱ってる所を殺すなんて面白くないじゃない?


「そんなに警戒しないでよ、ターゲットを殺したりしないから」


睨んじゃってもう……。そういうの、敵意とみなして切りかかっちゃうよ?
まあターゲットに怒られそうだから殺らないけどね。
僕は先程までシロが立っていた場所に向かって飛び降りた。





2021/01/04


prev next

戻る















×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -