才能の時間



「あれでは生徒達が潰れてしまう……。私から見れば間違っているものの、彼には彼の教育論がある。ですから烏間先生、貴方が同じ体育の教師として彼を否定してほしいのです」

「否定……。俺が……?」



階段に座り込む烏間殿とターゲットの背後に立ち、イリーナの隣でグラウンドで行われている光景を黙って見つめる。
その背中は昨日見た様な自身溢れるような雰囲気はどこにもない。


「まぁ、それまでだったって事だな」

「それまで……?」

「ああ。君が彼らに対する感情が、ね」


ここで黙って彼らの様子を見つめているのがその証拠だ。
表情だけ見ていれば冷たい人間のように見えるが……。僕が見るには烏間殿は___



「そこまでだ……暴れたいなら俺が相手を努めてやる……!」


結構物好きだと思うけど。
そう思っていた時には既にグラウンドに烏間殿はいた。
女子生徒……『倉橋日菜乃』に殴りかかろうとした鷹岡の腕を背後から烏間殿が止めていた。



「人の感情に敏感な所は変わってないわね。むしろ、更に鋭くなった気がするわ」

「相手が分かりやすい奴ばかりなんだよ」



イリーナの言葉にそう返し、視線をグラウンドへ落とす。
対面している烏間殿と鷹岡の会話に耳を傾ける。



「言ったろ?これは暴力では無い、“教育”なんだ。暴力でお前とやり合うはない。やるならあくまで……“教師”としてだ」



なーんだ。軍人同士の殺り合いを期待してたのに。
そう思いながら、再び鷹岡の言葉に耳を傾けた。


「この中で一押しの生徒を選べ。そいつが俺と戦い、一度でも俺にナイフを当てられたらお前の教育は俺より優れていたのだと認めて出て行ってやる。……ただし、使うのはこれじゃない」


鷹岡は取り出した対ターゲット用のナイフを放り、そのナイフの上にある物を突き立てた。
そう、それは……


「殺す相手は俺なんだ。使う刃物も……本物じゃなくちゃなァ?」


ゴムのような作りでは無く、自分がよく使っている金属でできたナイフだった。





2021/01/04


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