学園祭の時間



「さーて、もうすぐ頂上だね〜」

「ぐうぅ……っ」


必死に抵抗するも、僕の努力は意味なく。ラファエル……セラに腕を引っ張られ、虚しくも着いてしまった。そう、3年E組の校舎へ。

そういえば、いつもの道の前に桃花がいたけど、僕達に気づかなかったな。……いいや、気づかせなかった、というのが正しいか。
僕は当然のように出来るけど、セラも使えるんだな……隠密スキル。

裏社会において、あらゆる事を隠す事は必須だ。僕より短いとはいえ、割と長く裏社会を生きている。自然と身についたのかもしれないな。

そんなことより、なんでこんなに力が強いんだ!
くそう、引きこもりのくせに……!
僕は引きこもりに負けるのか……!?


「着いた! おーい、E組のみっなさーーーんっ!」

「大声で呼ぶな!!!」


セラの大声に思いっきりツッコんでしまった……。逆に見つかるだけじゃないか!!


「あの人は……!」

「苗字を連れて帰った人!」


ほら見ろ!!
既に何人か反応しているじゃないか!!


「あっれぇ〜? 俺の目の前に名前がいる〜」

「ひぃっ!? ……って、耳元で喋るなカルマ!!」


耳に感じた吐息に反応してしまう。
違う、勘違いするな。僕は殺し屋として五感を鍛えているんだ。だから反応しやすくなっているだけであって、カルマの声に別の意味で反応したわけじゃない!!

なんで君がここにいるんだ……!
そう思いながら振り返った。


「……何持っているんだ?」


そこには服を持ったカルマが。なんで服?


「え〜? これはメイド服、こっちはミニスカートのサンタ服」

「所謂コスプレ用の服だね」

「はぁ!?」


なんでコスプレ用の服なんて持ってるんだよ!!


「って言うか、なんでラファエルが知っているんだ! まさかお前、そう言う趣味が……」

「なんか勘違いされそうだから言っておくけど、僕はそういう趣味はないよ。普通に知ってただけ」


ちぇ、お前のくだらない趣味なんじゃないかって期待したのに。残念、弄るネタは増えなかったか。


「なんてコスプレ衣装なんて持ってるんだよ、カルマ…」

「おやおや〜? 誰かと思えば、名前ちゃんじゃないか」

「り、莉桜!」


カルマに問おうとした時だ、ニヤニヤした顔で近づいて来た莉桜を発見したのは。というより、いつも呼び捨てで僕を呼んでいるからなのか、ものすごく違和感があったんだけど。


「あ、あれ?」


二人の圧から逃げようとしたときだ。さっきまで隣にいたセラの姿がない。彼奴、どこに……って。


「ラファエル!?」

「久しぶりの学校とクラスメイト、楽しんでくるんだよ〜。僕はスモッグさんと研究成果を語り合うからこれで」


彼奴……!
やけに素直に言う事を聞いたと思えば、スモッグがいるからか!!

お互い研究熱心な所があるからなのか、一度会えば暫くは討論し出すのだ……互いの研究テーマについて。科学者故の楽しさなのだろうか……。


「邪魔者もいなくなったことだし……」

「久しぶりのE組へ名前を連行だ〜!」


なんて思っていれば、莉桜が僕に手を伸ばしているではないか。そして、連行など言っている!

……ここで大人しく捕まる僕ではない!
僕は莉桜の手を躱し……。


「逃げるが勝ち、だ!」

「「逃げた!?」」


そう、僕はこの場から回避を選んだのだ。

逃げる?
時には必要だろう?
場合によっては、状況を建て直すために身を引くこともあるんだぞ!


「ふふん、僕の速さに追いつける奴などいな…」


数名の生徒達と距離を置きながらE組敷地外へ出ようとした、その時だった。


「うわああっっ!!?」


右足に締め付けられる感覚。それに気付いた時には遅く、自分の身体が宙に浮いていた。


「な、なんだこれ!?」


状況を理解した……どうやら僕は間抜けにも罠に掛かったらしい。それも、ものすごく古典的な罠にな!

というか、今の僕スカートなんだけど!
下着を見られないようにレギンスは履いているけれど、普通にマズいんですけど!?





2024/01/27


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