学園祭の時間



「ま、眩しいなセラ……」

「そ、そうだねナマエ……」



現在、イベントステージの中にいる僕達。
先程語った台詞とは別の意味で眩しいんだけど。目がチカチカする、耳が痛い……。五感を鍛えたのがこんな所で痛手になるとは……。

大丈夫かな、目と耳は正常に機能しているかな。それに、あまりの人の多さにちょっと酔ってきた……おかしいな、人気の多い場所は僕に取って身を隠す便利なものだというのに。


「すまないセラ……少し外の空気を吸ってくる……」

「行ってらっしゃい」


僕は少し離れる事をラファエルに伝え、適当な場所へ移動する。
はぁ、ここまで騒がしい声が聞こえる……でも、さっきより目も耳も安定してきた。


「なるほど、これが文化祭か……」

「文化祭がどうかしたか」

「実は文化祭というものが初めてでな。あまりの騒がしさに驚いて……って、え?」


改めて文化祭について考えていると、僕に話しかけてきた声。あまりにも自然に入ってきたものだから、人がいることに気づかなかった。しかも、猫を被るのを忘れた!

そう思いながら、声が聞こえた方へと振り返ると、そこには見覚えのある人物が。


「が、学秀……」

「久しぶりだな、名前」


そこにいたのは、椚ヶ丘中学校の生徒会長である学秀が。……体育祭以来か。


「あ、あぁ。久しぶり……」

「少し顔が青いようだが、どうした」

「な、なんでもない。少ししたら治る」


それで、わざわざ僕に話しかけたって事は、何か用でもあるのかい?
少し気分が悪くなったことを隠す為、学秀にそう問いかけた。


「中間テストを受けていなかったようだからな。気になっていたんだ」

「あ、あぁ。そのことか。少し家の事で学校に来れなかったんだ」


……と言うことにしよう。
学校に来れなかったのは事実だ。だが、それは完全な僕の私情である。けど、僕に取っては大事なことだったんだ。


「なるほど。家の事情なら仕方ない。だが、学業においてテストの結果は将来に響く。君はE組なんだから気を付けた方がいい」


……あれ、もしかして僕、心配されている?
何故と思いながらも、受けた厚意はありがたく貰うのが僕だ。悪意がないことが前提だけど。


「所で、君は演奏出来るか?」

「演奏? できるほうだけど」


急に話が変わったな。まぁ、楽器を扱う事は人を魅了する点において役に立つ道具だ。勿論、スキルとして身に付けているとも。


「なるほど。であれば、少し来て貰ってもいいか」



***



「僕と学秀で演奏するだって? 急な話だな……」


学秀に連れられて来た場所は舞台裏。そこで告げられたのは、なんとセッションをしないか、というものだった。
というか、僕の許可取る気ないだろ、強制参加させる気だろ。だって学秀のやつ、ギターのチューニングやってるし!


「ほ、本気なのか?」

「そうだけど、何か問題でも?」

「問題だろ。まず、僕はE組の人間だ。本校舎からすれば、僕は部外者だ」


僕の中では本校舎の人間はE組を嫌っている、と思っていたんだけど……。
そう思いながら学秀を見ていると、ギターからこちらへ視線を向けた。


「だから僕とセッションはできないと?」

「いや、そういうわけでは……」

「なら問題無いな」


……はぁ、もういいや。
僕は知らないからな、本校舎生徒から君の評価が下がっても。


「で? 僕はなにをすれば良いんだ?」

「ドラムは叩けるか?」

「叩けるよ」

「見ての通り、僕がギターをやる。名前はドラムを叩いてくれ」


少し叩けば感覚は取り戻せるだろう。
流石に急に叩けは難しい話なので、少し叩かせてくれと頼み込んだ。向こうから了承を得たので、簡単に叩かせて貰う。……うん、大丈夫。問題無いな。

ならば、次に問題なのは。


「ドラムは問題ない。だが、叩くならせめてズボンにさせてくれないか?」


そう、僕の姿である。
先程学秀は僕と演奏することに問題ないと言ったが、逆に僕が気を使ってしまう。というわけで、スカートではなくズボンでも履いて、髪を結べば可愛らしい男にはなるからね。ものすごく簡易的だけれど。


「……あぁ、なるほど。配慮が足りなかったね。気にするタイプに見えなかったんだけど、そういう一面が君にもあるんだね」


あ、別の意味で捉えられた……。確かに見えると言えば見えるけど、流石にスカートの下が下着なわけないだろ。アクロバティックな動きを得意とする僕がスカートを履く場合は、見えても良いようにレギンスを着用するのが決まりだ。

なので、その点については気にしていなかったんだが……ま、そういうことにしておこう。


「ズボンについては用意させるよ。少し待っていてくれ」

「あぁ……なぁ学秀。しつこいようで悪いが、本当に僕とセッションしていいのか? E組と一緒である事を何か言われるかもしれないんだぞ」


他の生徒にズボンの件を話し終えた学秀に、僕は再び同じ問いをした。しつこいかもしれないが、どうしても気になってしまうんだ。


「……僕は純粋に君とセッションしたいだけだ。それに、君をE組のやつらと比べていない。A組同等の実力の君を、何故軽蔑する必要がある?」



今度は答えてくれた学秀。しかし、その内容は___一言で言ってしまえば、特別視というやつだった。





2023/12/10


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