死神の時間


side.潮田渚



時刻は18時。
夏だったら、この時間帯はまだ明るかっただろう。しかし、10月となればすっかり日が沈みきってしまう時期だ。

……そんなのんきな事、言っていられるような状況ではない。


「あそこが入り口か」

「空中から一周したが、周囲に人影はない」

「不気味ですね……」


僕達は死神が指定した場所に来ていた。今視界に見えている地下の入り口みたいな場所であっているはずだ。


「律、12時を過ぎて戻らなければ、殺せんせーに事情を話して。名前さんにも」

「……はい。皆さん、どうかご無事で」


死神との約束通り、先生達にはこの件について話していない。
また、苗字さんには連絡したものの、繋がらなかった。律にも確認して貰ったが、ビッチ先生と同じく、ここ3日間GPSやら公共のカメラなどでは確認できなかったそうだ。やはり、彼女と連絡を取りたければ殺せんせーに尋ねるしかない。


結局クラス全員ではないが、ビッチ先生の命が優先だ。それに、苗字さんがビッチ先生を見捨てるわけがない。だってあの時、烏丸先生に対して怒りの様子を見せたのだから。



***



「……一人いないみたいだけど、まあ全員来たと言うことにしよう。それじゃ、閉めるよ」


全員が中に入ると同時に、上のスピーカーから声が聞こえた。それは死神の声だった。
聞こえたと思ったら、バタンッと大きな音が響く。その音は、僕達が入ってきた扉が閉まった音だった。


「ふーん、やっぱりこっちの動きは分かってるんだ。死神って言うより、覗き魔だねぇ」

「名前さんは少し前に体調を崩してここには来れない。けど、彼女以外は此処にいる。約束は守ったわ、ビッチ先生さえ返してくれれば、それで終わりよ!」


片岡さんが死神に向かって話しかけた、その瞬間だった。


「「「うわあああっ!!?」」」


突然の地響き。それと同時に、地面が下に下がっていく感覚がする。まるで、エレベーターで下の階に向かっているような……って。


「なんだ!?」

「部屋全体が下に!」


そう。部屋自体が下がっているのだ。一体誰がこんなことを……!?
段々と下がっていく部屋の中、ジッとしている事しかできないでいると、石壁がなくなった。その代わりに現れたのは、鉄格子の檻みたいなものと___



「捕獲完了♪ こうやって一斉に捕獲するのが一番リスクがない」



僕達の視界の前に立つ死神。そして、彼の背後に……



「「「ビッチ先生っ!!!」」」


死神が送った画像と同じく、拘束された状態のビッチ先生がいた。僕達の声に反応していない様子から、恐らく気絶している?


「くっそ!!」

「大丈夫、奴が大人しく来れば、誰も殺らない」

「俺達が反抗的な態度とったら、頭にきて殺したりは……!」

「しないよ。子供だからってビビりすぎだろ」


であれば、ここから脱出しなければ。
まずは、死神を油断させるところからだ。


「……いや、ちょっぴり安心した!」

「ここだ! 空間のある音がした!」


何故僕達が壁を叩きまくっていたのか。……それは勿論、捕獲された状況から脱出するためだ!

三村くんが抜け穴を探し出し、竹林くんを呼ぶ。そして、竹林くんが爆弾を設置したところで奥田さんが煙幕を張る!
……その数秒後、爆弾が爆発した。今、死神の視界は煙幕で何も見えないはずだ!


「……へぇ。ふふっ、良いね。そう来なくっちゃ!」

あの子・・・が来るまでの暇つぶしになると良いけど」


作った隙で僕達は脱出した。だから知らなかった。
僕達が脱出した後、死神がそう言っていた事を。





2023/09/02


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